深圳ローカル考/豊富な緑も見て欲しい。深圳の環境保護産業都市ぶりがスゴイ

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所)  】

深圳には最近、経産省関連の視察団が頻繁に訪れている。その多くが、中国のシリコンバレーと称されるまでに至った都市の現状を見るためだ。たしかにスタートアップのための環境や条件が中国でいちばん整っているのは事実だろう。もちろんそれは「中国」という枠組みの中であり、法律はもちろん、集まる資金も稼ぐお金も人民元が基本なので、日本にとって参考になるか否かは、視察団の面々が何処を見るかに拠るだろうが。

もともと人民元は「愛国通貨」という呼称で揶揄されていた。2003年頃までは香港ドルが重宝されていたし(なるべく先に人民元を使う)、為替レートが逆転してからも香港ドル信仰は根強かった(現金取引はとくに重宝)。

しかし最近、愛国通貨という呼称がポジティブに捉えられているように感じる。あいかわらず海外への投資は規制されてはいるし、自由と責任のバランスは国が指導している(管理している)にもかかわらずだ。

深圳福田CBDエリアの夜景

 

今夏、深圳で、深圳株式市場に上場する2人のオーナー社長に出会う機会があった。かたや40代後半、かたや30代後半。いずれも起業以来10年以上、安定して業績を伸ばしてきた。ひと昔前は、愛国通貨への不信感ゆえに、本業以外の事業にこっそり手を出し、主に香港でせっせと蓄財するというケースが多かったが、この2人は「香港でも上場」を目指している。そしてそろって称賛するのは、福田ビジネス中心区(CBD)に立ち並ぶ高層ビルでもなく、ほとんど見かけることがない電線も電線柱でもなく、オール電気自動車化が秒読みのタクシー・バスでもなく、「以前より全然マシになっている」都市環境である。

もともと深圳は、経済特区として誕生して以来“中国第一の緑化都市”の宿命を背負っていた。たとえば、2011年に開催されたユニバーシアード大会前には、10億元(約170億円)の投資を行い、10か所の森林公園を新たに建設し、市内の森林面積率45%以上を達成した。(日本の関東地方では、福島県:71%、群馬県:61%、栃木県:55%以外はすべて40%以下)

緑道から眺めるユニバーシアード会場

 

このプロジェクトは「緑道計画」と呼ばれ、広州、珠海などを含めた珠江デルタエリア全体が対象で、それぞれの街に住む人の約半分(深圳であれば650万人以上)が訪れることのできる規模を想定している。深圳では、羅湖、塩田、福田、南山、宝安、龍崗の6つの全区が対象となり、市中心部における緑地帯の普及と同時進行で、毎年200~300km以上のペースで“緑道”を伸ばしてきた(2016年末時点/市全体では2500km以上)。

さらに2014 年4 月、「省エネ・環境保護産業の振興発展計画」を打ち出し、2014年からの7年間で毎年5億元(約85億円)ずつ投じ、省エネ・環境保護産業の発展を支援している。その目標として、省エネ・環境保護産業の総生産高を、年間平均成長率20%以上に引き上げ、2020 年までに3,000 億元(約5兆円)規模に到達させるという(『深圳市駐日経済貿易代表事務所』HPより)。

これとは別に、2015年に電気自動車(EV)など新エネルギー車(新エネ車)の普及支援に50億元(約840億円)を拠出した。比亜迪(BYD)が本社を構えているとはいえ、大都市の重慶市や広州市と比較すると、10倍以上の支援額である。(2005/2/3中国紙『毎日経済新聞』)

“緑道”のうちの一つ『塩田区緑道』を廻ってみた。海岸線と山のコントラスト、豊富な観光スポットとソツの無さが特徴。全長およそ20km。『中英街古塔公園』『黄金海岸線』『沙頭角』『塩田港』『大梅沙』『小梅沙公園』の観光スポットを巡り、終点の『海鮮街』で、塩田港の夜景を眺めながら、2階テラス席で賑やかに海鮮料理を嗜む。たしかに地元民にとって贅沢な週末を過ごせるスポットとなっていた。

塩田区緑道の名所、海浜桟道

 

環境保護のために税金を投入するにあたり、それがジャブジャブであろうがなかろうが、少なくとも香港上場を目指すオーナー社長2人は満足している。ひと回り以上世代が離れるビジネスパーソンが価値観を共有し、自らが起業した都市に自信を持ち続けていられるのは、なかなか羨ましい。「オレ様解散」や「私ファースト」がまかり通り結果すら問われない日本よりは、「結果オーライ」「愛国万歳」がマシに見えてくる。

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です