深圳ローカル考(9)/いい店が見つかる「美団-大衆点評」ランキングの使い方?

以前この連載で、中国O2O大手「美団-大衆点評」は中国最大の口コミ投稿サイトを紹介した。この評価額300億ドル以上で中国最大のユニコーン企業が日本で紹介されるときには、「中国版の食べログ」と例えられることが多い。

ところが実際は、レストラン以外に「映画やホテル、娯楽、美容、ウェディング、子育て、ホームセンターなど生活に必要なほぼ全て」のカテゴリーにおいて、O2O電子取引サービスを提供している。

(参考:日本支社公式HPよりhttps://www.dianping.com/tokyo/aboutus/

中国ではいまやひとり勝ち。<深圳ローカル考(4)>では、収益の大半は広告掲載費&手数料収入であるため、サイト自体のSEOも、ユーザー評価も、明らかに意図が加えられていると指摘した。

(参考:深圳ローカル考(4)/O2O最大手(美団-大衆点評)合併から2年【後編】市場寡占で疲弊感 http://whitehole.asia/2017/10/16/sz_local4/ )

ところが最近、著者のまわりで、「信用できる情報」を意図的に拾う、熟練ユーザーが増え始めた。

 

購入者数しか見ない

深せんの宝安区にある、ビュッフェ人気ランキング第1位(大衆点評サイト)のレストランの例。先に結論をお話しておくと、この店はガチで人気がある。ヤラセでも広告でもない。著者が知るかぎり、第1位を2か月以上キープしている。

さっそくメイン画面を見ていただきたい。

『团』でグループ購入すると、すべて半額。お得だ――と真に受けることなかれ。この割引率の大小はあまり信用できない。たいていの中国人は「アテにならない。嘘だ」と見向きもしない。

それよりも、「買一送一」(1個購入すれば1個無料サービス)のほうが、店側の切羽詰まったソロバン勘定(2人の来店で採算ベースぎりぎり感)が伝わるので、さすがに「嘘」とまでは敬遠されない。

とはいっても、熟練ユーザーにとって、割引き率は些末な情報にすぎない。

熟練ユーザーは、とりあえず金額の右側の『已售』で、すでに売れている数を確認するからだ。この店の場合、『单人自助晚餐』(ディナーお一人様)であれば5,689人が購入済み。「これだけ大勢の人が買っているのだから」と信用するわけだ。

ただし、購入者すべてが既に店を訪れているというわけではないので、あくまで参考程度といったところだろう。

(購入者数を運営側が操作しているという噂も根強かった。真偽は不明)

 

悪い評価レビューしか見ない

メイン画面の下にスクロールさせていくと、ユーザー評価欄が現れる。

この店の場合、五つ星(満点)を与えたユーザーがトップ表示されている。一人目のユーザーは「近所にビュッフェ人気ランキング第1位の店がある」と訪れ、写真付きで絶賛している。

ちなみに『VIP』マーク付きのユーザーはサイトから認められた常連コメンテーターのこと。今や、ユーザー寄りのVIP投稿者には1,000人以上のフォロワーが付いていることは珍しくなくなった。

著者の知るかぎり、店を訪れた客に対して、店側が「五つ星評価をしてくれたら○○○サービス」など、反則すれすれのアプローチをするのは常識だ。そのため、評価レビューの内容はほぼアテにならない。

ちなみになぜ「反則すれすれ」がまかり通るのか? もちろんサイトの運営側は明確に禁止している行為である。だから店側も気を使い「五つ星評価してくれないとサービスしない」と言い方に留めておき、露骨に強要しない。「○○○がサービスできるかも。五つ星評価してくれたら嬉しいなあ」とお願いしている――というアプローチ(言い訳?)。

こうした店側と顧客のやり取りを、サイト側が24時間365日、監視できるわけがないので、熟練ユーザーは「悪い評価しか見ない」という。しかも、一つ星は競合店からの嫌がらせだったり、冷静な意見が少ないなどで、「二つ星や三つ星を参考にする」そうだ。

 

ランキングは鵜呑みにしない

「美団-大衆点評」サイトでは、頻繁にランキングを実施している。

といっても、サイト側の広告企画である場合が多く、ユーザーによる評価点のみのランキングに行く着くのは、慣れないと(ましてや日本人には)簡単ではない。

運営側が購買者数を操作したという噂がまことしやかに流れたり、店側が著名投稿者に過剰接待したり、<上に政策あれば、下に対策あり>を地でゆく情報サイトであるがゆえに、ランキングの真偽を確かめるレポートまで存在する(写真上)。

よほど「一人勝ち」に自信があるのだろうか、別メディアで発表されたレポート記事へのリンクまで掲載するほどの余裕ぶり(写真下)。熟練ユーザーはそういう記事の行間を読み取りながら、情報の正確さを推測している。

グルメ好きといっても、味の好みは人それぞれ。舌が肥える前に「(情報を拾う)目」が肥える点は、日本のグルメ―ブームと異なる。

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

 

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kanan
monthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

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