深圳ローカル考(15)/即売御礼!? 11LDK・65000万元の豪邸

貧しさは想像力を乏しくさせる――。

中国では昨年、こんな言葉が流行したそうです。広い意味では「窮すれば鈍する」といったところ。おおよそ反対の意味で、易経の「窮すれば通ず」(最悪の事態に陥り、どうにもならなくなると、かえって活路が開けるもの)という言葉がありますが、今の中国ではもっと世知辛い意味で使われているようです。

 

■六本木ヒルズの10倍!?

深セン市南山区にある「深圳湾1号」で超豪邸が売り出されました。

35階建ての最上階に位置する、南向きの7室4厅(11LDK/1671㎡)。8つのW.C付きで、売値は6.5億元(日本円で110億円あまり)。

ローンを組むなら、頭金1.95億元(約33.5憶円)、毎月24万元(約4000万円)の200回払い。それ以外に、毎月かかる管理費が2.5万元(約42万円)――。

日本で有名な六本木ヒルズ(港区)の家賃は、広い物件で4LDK+S(300m2)で300~500万円が相場。間取りは5倍以上、金額は10倍以上、深圳湾1号のほうが上回っています。

 

■深センの気風~疑っても意味がない

ところが、この“110億円物件”のニュースはフェイクだったんです。

著者も深セン在住の知人4人の微信で見つけました。

それぞれ「深センでは想像すらしたこともない、人生を疑うようなことが多く起こり得る」という言葉が添えられて……。この一言が、フェイクニュースに信憑性を付加してしまったようです。

一般的に中国人は「シェア」好きです。興味が引かれたニュースを、何のコメントも付けず、時にはタイトルだけしか読まずに、無造作に自分のタイムライン(微信ではモーメント)へ投稿します。

そのため、地元当局が乗り出し、フェイクニュースの火消しをするハメになりました(写真下)。

ちなみに、深圳湾1号の中古物件相場は約12万元/平方メートル。深圳湾1号“110億円物件”の3分の1以下です。想像力を逞しくすれば、ありえない数字ではなかったためアッという間に拡散したわけです。

とはいえ、実勢価格に換算しても30億円以上。家賃は六本木ヒルズの2~3倍。中国不動産バブルははじけることなく、粛々と健在しています。

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kananmonthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

 

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