ドローン×社会インフラ について語る【記者:川ノ上和文氏】

中国(深セン市)在住のドローンウォッチャー川ノ上和文さんが、ドローンシティー深センから見た世界のドローン事情をご紹介します。今回は第一弾としてルワンダのドローンベンチャーについてお届けします。

 

ルワンダの医療品輸送ドローンから考えるドローンx社会インフラとは?

日本では民族紛争で悲劇の地として知られるアフリカ中央部の国 ルワンダ。この国は今IT立国として紛争からの復興が急速に進んでおり、注目を集めている。その注目事例の一つが2016年に発表され現在世界初の全国規模となるドローン配達サービスである。配達対象となっているのは救命血液やワクチンなどの医療品でサービスの構築と運用はアメリカ企業のZipline(ジップライン)が行なっている。ルワンダに限らず、アフリカの多くの国で深刻な課題の一つになっているのが物流や交通インフラである。道路整備が進んでおらず自動車移動が困難な状況下で、緊急性の高い医療品輸送の手段としてドローンが注目され、空を活用した物流網ができた。さらにドローン専用の飛行場の建設も進んでおり、本格的にドローンインフラが整備されてきている。

 

このような事例は他にもあり、ケニアを中心に広まったエムペサというモバイル送金システムがあるが、現時点でケニアのGDPの4割がエムペサ上で取引されていると言われている。これは銀行システムが弱い環境下で、出稼ぎ労働者による少額送金ニーズや盗難リスクを解決する仕組みとして急速に普及した。

 

これらの事例のポイントは途上国や新興国の社会インフラが未成熟な領域で、需要が高い課題解決の手段として最新技術やコンセプトが取り入れられ、国のインフラとして社会標準になっていくスピードと変革幅の大きさである。先進国では技術的には可能だが、既存の法律やシステム、利権団体等が足かせになり導入検討が進まなかったり、実現性が低くなってしまう技術やサービスが往々にしてある。

 

ドローンもその一つと言えるだろう。既存インフラがほぼないに等しければ、改善ではなく新規でどう作るか、という発想になる。この情報化社会において海外情報を取ることは難しくはなく、どの技術や仕組みがこの環境下で最も課題解決に役立つか、を誰もが考えることができる。ドローンで何ができるのか、これは今の日本の仕組みの中だけで考えていては拡がりが見えない。今後、ドローンの技術はますます進化していくだろうし、アジアやアフリカの国々も成長していく。その技術がどのような社会インフラを作れるのかを考え、サービス化していくことでドローン産業の裾野はより広くなっていくはずだ。

 

今後も考えるきっかけになるようなドローンx〇〇の色々な事例について、ドローンシティーである深圳から発信していくので楽しみにしていただきたい。

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■川ノ上和文■
大阪出身、深圳在住。xyZing.innovation(翼彩創新)総経理/日本ドローンレース協会(JDRA)海外事業責任者/iROBOTICS社アジアパシフィック事業開発担当。
深圳を軸としたアジアxMICE(Meetings,Incentives, Conferences,Eventsの頭文字をとった造語)の事業開発。
北京留学及び留学支援会社での講座企画、上海での日系整体院店長、東京での中国語教育事業立上げ、台湾でのワーキングホリデーを経て深圳へ。
先進国とは異なる新興国や途上国での都市成長やテクノロジーによる社会変革、そしてその未来を生み出す人間の思考や創造力の開発に関心が高い。ドローン活用の思考枠を拡げるための場として深圳でアジアドローンフォーラムの開催準備中。

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