おとなの社会科見学・香港編(1) 香港長洲島~饅頭祭

この連載では、香港日本人補習授業校で教鞭をとる傍ら「おとなの社会科見学」を主宰する、エデュケーショナル・アクティビスト(教育活動家)の森山正明氏の協力を得ながら、深圳をビジネス視察で訪れた際に立ち寄ると面白いスポットをお伝えしていきます。

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香港といえば、ビクトリアピークからの100万ドルの夜景が代名詞のように観光がメインと思われますが、世界中から中国大陸とのゲートウエイとして多くのビジネスマンが行き交うアジア随一の国際都市です。海外でビジネスをする上で大事なのはやはり現地理解。今回は、『Time.com』が<世界の10大奇祭>に選んだ『饅頭祭』について紹介します。中国の伝統的な祭りについて理解を深めてもらいたいと思います。

部隊は長洲島饅頭祭。その名のとおり「饅頭」がメインとなり、島中が饅頭で埋め尽くされます。今年は、5月19日〜23日の期間開催。北帝廟というお寺前を中心に、道教の式典、ライオンダンス、ドラゴンダンス、仮装パレード、銅鑼太鼓、そしてクライマックスは、饅頭でつくられた塔の上にある饅頭を取り合う競争(搶包山比賽)などがあります。

お祭りの起源を紐解くと、清の時代後期に、この島で疫病が流行ったときに、島民たちは北帝廟の前に祭壇をつくり、疫病をもってきた悪霊を追い払う儀式をとりおこないました。その結果、疫病は収まり、平和な島に戻ったそうです。このお祭りは、そのことを祝うものとして、毎年行われ、無形文化財に指定されています。

このお祭りは、中華圏の国々で行われる「醮」と呼ばれるもので、地域内の一員が神に祈りを捧げる祭祀の一種です。

地方によって「醮」の名称や種類などが異なりますが、香港では「太平清醮」と呼ばれています。この饅頭祭りも実は、この「太平清醮」の一種。この祭りは、収穫が終わった農閑期の旧暦10月以降に行われるのが一般的ですが、漁村では4~5月に行われることが多く、この饅頭祭りは、通常4月か5月に毎年行われています。

実行委員会を1年前から立上げ、祭祀を代表する「縁首(えんしゅ)」を選出したり、道士や劇をしてくれる団体を手配したり、「醮棚」と呼ばれる屋内建物やさまざまな人を雇うお金を地域のメンバーに寄付を募るなど、実に多くの手順を踏んで祭祀の日を迎えていることが特徴です。

祭祀の内容は、揚旛(竿を建てる儀式)や迎神登壇(地区内に神々を迎え入れる儀式)、祭大幽(孤独な霊魂を救済し衣服や食物を施す儀式)、送神回位(醮棚に招いた神々をもとの住処に送り祭祀が終了)などがあります。「醮」の場には、祭壇や閻魔殿、広東オペラの舞台、寄付金額を掲示する小屋などが建てられ、また縁起物の風車や飾り物が売られ食べ物の屋台も出ており、縁日のような賑わいになります。

小さい島に数万人の人が集まる一大イベント。このお祭りを観に行くのは、香港社会の一面を知ることの一つになると思います。ぜひ訪れてください。

 

【構成:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部) 】

華南NET代表。東京外国語大学在籍後、講談社契約記者、深圳大学留学を経て、華南(香港)日商企業信息資訊有限公司(華南NET)設立。CEO兼編集長として日本企業向け会員制ビジネス誌を企画・発行。プロモーション・マーケティング支援、法務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

【写真・文:森山正明(教育活動家)】

海外帰国子女向け作文・面接・自己PR受験対策サイト「森山正明の海外帰国子女向け、作文&プレゼン入試 実践対策」編集長。香港日本人補習授業校で教鞭をとる傍ら「おとなの社会科見学」主宰し、海外在住の日本人に新たな出会いや歴史・社会を学ぶ機会を提供している(のべ参加者2300名)。香港在住。二児の父。

 

 

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