「双11」今年も記録更新! 輸送の効率化へ高速鉄道の車両をチャーターする業者も

毎年アリババが仕掛けている11月11日の買い物イベント「双11」が今年も開催され、去年の記録を大幅に更新した。アリババグループの創業者 ジャック・マーが一線を退いてから初めての大型キャンペーンで、ジャック・マー不在の中、うまく成功を遂げたと言える。

この「双11」というイベントは2009年から毎年開催されており、このイベントの発起人は「アリババ」現CEOの張勇氏である。2009年の売上げは5000万元(約7.8億円)であったが、毎年数字を伸ばし、記録を更新し続けている。

今回の記録をまとめてみる。

・時間記録
1分36秒で100億元達成(約1500億円))、昨年は2分05秒
5分25秒で300億元達成(約4500億円)、昨年は12分14秒
12分49秒で500億元達成(約7800億円)、昨年は26分03秒
1時間3分59秒で1000億元達成(約1.5兆円)、昨年は1時間47分26秒
14時間21分27分で2000億元達成(約3兆円)、昨年は22時間28分

・交易額
2011年 52億元(約800億円)
2012年 191億元(約2900億円)
2013年 350億元(約5400億円)
2014年 571億元(約1500億円)
2015年 912億元(約1.4兆円)
2016年 1207億元(約1.8兆円)
2017年 1682億元(約2.6兆円)
2018年 2135億元(約3.3兆円)
2019年 2684億元(4.1兆円)

記録を大きく更新している。

イベント後のジャック・マーによる会見によると、発送する物流の量は約12.9億個と言われており、この数字はアメリカの1カ月半の物流量に相当する。また、2007年の中国1年間の物流量でもある。

現在、中国国内の物流量は年間約600億個となっており、毎年アメリカの年間物流量分が増加している状況という。

物流量もさることながら、筆者が毎年このイベントで買い物していて気付いたのが、年々「配達の遅れ」も少なくなっているという事実である。3年くらい前までは11月11日以降、2週間ほど物流混乱時期があり、すべての物流に遅れが生じていた。ここ数年は1週間を切っており、昨年ぐらいからほとんど遅れを感じなくなった。今年は早ければ翌日に商品が到着しており、普段と比べても2、3日遅れる程度だ。

この背景には、アリババや物流会社の倉庫が自動化され、効率が良くなっていること、物流各社が様々な方法で事前対応していること、街中の宅配ボックスが出てきたこと等が考えられる。

ある物流会社は、高速鉄道の車両をチャーターし、イベント当日中に輸送を開始したそうだ。

ネット・ショッピングはここ数年、インフルエンサー等の活躍により、成長を続けている。タオバオ(淘宝)もライブ配信機能があり、当日もトップクラスのインフルエンサーたちがライブ配信で販売していた。タオバオライブチャットランキングトップのインフルエンサーである微婭 viya氏は、当日の閲覧量が瞬間最大で3300万人、李佳琦氏は2700万となった。

各省ごとの購買ランキングは、1位広東省、2位蘇州省、3位浙江省となっている。都市別だと北京がトップで、上海、広州と続き、深センは5位にランクインした。ちなみに、深セン市内に限定すると宝安区がトップ。広東地区でもっとも売れたスマートフォンは、「iPhone 11」を抜き、「ファーウェイ」の最新スマホ「 Mate 30」シリーズであった。

11月11日はアリババのイベントだけではなく、他のECプラットフォームも便乗し、各種イベントを開催している。中国版Amazonと言われる「京東(JD.com)」も買い物イベントを開催し、約2000億元(約3兆円)の売り上げを記録した。この日一日の中国での交易額を合計すると、それこそ“とんでもない数字”になる。

毎年、中国の旺盛な購買力には驚かされるばかりだが、この現象は言うまでもなく中国が経済的に豊かになっていることが影響している。アリババグループの仕掛ける戦略も見事で、ジャック・マーという“偉人”が退き、新しいトップに代わった最初のイベントで成功した事実は素晴らしい。来年さらに大きく数字を更新できるのか、今からとても楽しみである。

ちなみに、イベント後の報道で、当日会場にいたジャック・マーの姿が撮影されている。その写真では、同氏は双眼鏡で会場後方から様子をチェックしており、一線を退いたとはいえ、「アリババ」のことは常に気にかけているようだ。

記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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