「テンセント」が1300億円で“島”を取得!

2019年11月29日、2社の著名企業が宝安区の土地を取得した。

その内の1社は深センを拠点とする大手IT企業の「テンセント」で、同社は85.2億元(約1300億円)で大鏟湾(A002-0076)の土地を落札したという。テンセントの“インターネットプラス”未来科技城”という長年の夢が、ついに現実味を帯び始めてきた。

テンセントが落札した土地が“島”になっていることも注目したい。地元メディアによると、前海では現在、都市新中心規則と3年行動計画を実施しており、“一つの湾、二つの山、五つの区、四つの島”を結合させ、“山、海、林、城、島、港、湾”が一体化した、新しい都市の中心を作りあげる目標を掲げている。また、前海深港現代服務業合作区と前海蛇口自貿区が積極的にこの計画に取り組んでおり、すでに国務院にも上げられているプロジェクトである。

“一つの湾”は生態内湾、“二つの山”は大南山と小南山、“五つの区”は蛇口片区、媽湾片区、桂湾片区、前湾片区、宝安中心区、“四つの島”は大鏟湾国際服務島、大鏟湾国際交流島、大鏟島、小鏟島を指す。テンセントが獲得したのは大鏟湾国際服務島と大鏟湾国際交流島だ。宝安中心区によると、これらの島は「CBD+TBD」(中央商務区+科技イノベーション服務区)と位置付けられている。

以前から深セン市宝安区と「テンセント」は共同で海外のデザイン関連企業10社から深セン“インターネットプラス”未来科技城のデザイン案を募集しており、その内の4社は建築デザイン界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」受賞企業だ。ネットではすでに「テンセント」の深セン“インターネットプラス”未来科技城のイメージ画像が出回っていたので、ここに紹介しておこう。

《深セン“インターネットプラス”未来科技城土地選択重点産業プロジェクト方案》から見ると、テンセントは深セン市に約3万8000人のスタッフを抱えており、オフィス面積は約70万平米。その内、自社所有の面積は33万平米で、テナントとして借り受けている面積が合計37万平米となっている。テンセントのスタッフの人数は毎年約13%増えており、7年後には約8万9000人に達する見込みだ。仮にスタッフ1人当たりに必要な面積を20平米とすると、オフィス面積として約178万平米が必要になる。現在所有している自社ビル2棟、建設中の1棟の合計である48万平米を差し引いても、約130万平米足りない計算となる。しかし、今回の“島”取得により、同社は10万人が働けるオフィス面積を確保したわけだ。

今回、もうひとつの土地を落札したのはスマートフォンメーカーの「Vivo(維沃移動通信(深圳)有限公司)」。落札価格は12.9億元(約200億円)で、ここは宝安区新安街道の商業用地となっている場所だ。なお、2018年11月27日には、「OPPO」が深セン湾超級総部基地を35.89億元(約550億円)で落札している。

この度「テンセント」が取得した土地は、深セン“インターネットプラス”未来科技城のプロジェクトに欠かせないものだ。このプロジェクトはかなり前から存在しており、2016年9月20日には、深セン市の主席会議上で、当時の書記である馬興端氏が重大なメッセージを発している。

「大鏟湾1.2平方キロメートルの土地は産業政策に基づき、テンセントCEOの馬化騰氏にこの場所をインターネットプラス(※)産業科技園を作り、全国各地に産業パークが乱立しないよう、この産業をリードしていく場所にしてほしいと伝えた」

近年政府が推進している産業デジタル化戦略にも有効活用できるという点でも、「テンセント」にとってこの土地は重要となる。今回取得した土地は“産業プロジェクト用地”という位置付けで、用地面積80.9万平米、建物面積200万平米。使用期限は30年とされている。

※ インターネットプラスとは“IT+伝統産業”を意味し、中国の国家戦略のひとつでもある。中国では2012年頃から使われるようになった。2015年には国家戦略の中にもこの言葉が登場している

記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

佐々木英之の記事一覧

【PR】深セン視察ツアー毎月開催中!

日本 × 深セン(中国)オープンイノベーション支援サービス

中国&深センの最新テック事情をキャッチ、有料レポートサービス

レポート

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です