ヒューマノイド「逐際動力」が香港でIPO申請 約480億円を調達
深圳・南山区のオフィス街を歩いていると、ロボットベンチャーの看板が一年ごとに増えていくのがわかる。だが2026年の夏、深圳のヒューマノイド企業が向かった先は展示会でも工場でもなかった。香港証券取引所である。
深圳に本社を置く人型ロボット企業「逐際動力(LimX Dynamics)」が、香港取引所に非公開形式でIPOを申請した。ブルームバーグが8月18日に報じたもので、調達額は最大3億ドル(約480億円)、主幹事は中信証券(CITIC Securities)とされる。

設立4年で企業価値3600億円
逐際動力の設立は2022年。つまり創業からわずか4年での上場申請ということになる。直前の2026年7月にはプレIPOラウンドで約2億ドル(約320億円)を調達しており、この時点での企業価値は150億元(約3600億円)に達していた。
出資者の顔ぶれが、この企業の位置づけを物語っている。アリババグループ、蔚来資本(NIO Capital)、上海汽車集団(SAIC)系ファンド、そしてスマートフォン向けガラスで知られる藍思科技(Lens Technology)。ネット企業、EVメーカー、国有自動車グループ、部品サプライヤーが同じ一社に並んでいる。ヒューマノイドが「研究テーマ」ではなく「産業サプライチェーンの一部」として見られ始めている証拠だ。
製品ラインは、等身大の人型ロボット「Oli」「Luna」と、モジュール型の「TRON」シリーズ。深圳企業らしく、完成品とモジュールの両方を持っているのが特徴である。
出荷では上海・杭州勢、資本市場では深圳
ここで押さえておきたいのが、業界全体の数字だ。調査会社SAGによれば、2026年1〜6月の世界の人型ロボット出荷台数は約1万9100台。前年同期の5100台から3倍以上に膨らんだ。そのうち中国メーカーが97%以上を占めている。
出荷台数の首位は智元機器人(AGIBOT)の8400台でシェア44%、2位は宇樹科技(Unitree Robotics)の5900台で31%。この2社で世界の4分の3を握る計算になる。ただし前者は上海、後者は杭州の企業だ。
つまり、台数のレースでは深圳勢は必ずしも先頭にいない。にもかかわらず、資本市場に最初に打って出たのが深圳の逐際動力だった。ここに深圳という都市の性格が表れている。作る速さだけでなく、資金を集める速さもこの街の競争力なのである。
「見せるロボット」から「働くロボット」へ
もう一つ、SAGの統計で見逃せない変化がある。用途別の内訳で、産業・商業分野の比率が前年同期の約50%から70%以上へと上昇した点だ。展示会で歩いてみせるロボットから、工場や店舗で実際に稼働するロボットへ。市場の重心が明確に移っている。
SAGは2026年通年の出荷を約6万台、2030年には50万台と予測する。この数字が現実になるなら、いま深圳で起きているのは投資バブルではなく、産業の立ち上がりそのものということになる。
ヒューマノイドが上場企業になる時代が、思っていたより早く来た。深圳では、未来はいつも予定より前倒しで到着する。
ホワイトホールでは、深圳の最前線を実際に見て、現地の起業家と直接話す視察ツアーを開催しています。ロボティクス、AI、EV、ドローンなど、関心のある分野に合わせて訪問先を組み立てることも可能です。
