深圳ローカル考(4)/O2O最大手(美団-大衆点評)合併から2年【後編】市場寡占で疲弊感

O2O中国最大手の『大衆点評』と『美団網』が合併したとき、現場の営業マンはどのように顧客に対応したのだろうか。前編に続く今回は、店舗と読者という2つの視点から見たレポートを、後編としてお届けしたい。

 

身内で陣取り合戦

合併したとはいえ、美団-大衆点評は両サイトともあいかわらず健在だ。似たり寄ったりのサービスを提供していながらも、各都市でシェアを二分してきたのだから、あえて統合する必要もなく、これまでどおり「どちらかお好きなほうを」という合理的なスタンスである。

前編でレポートした、既存顧客に対する営業マンの手のひら返しは、中国らしい躍動感とも言えるし、いずれにせよそれまでの殿様営業が改善されるだろうと、顧客(店舗)側は期待していたのも事実だ。

ところがなんと美団の営業マンは、独占契約を求めてきたのである。

「美団にのみ店舗情報を掲載すれば、美団としていろいろサービスができる」――細かい文字びっしりの契約書を携えて。合併直後のドタバタにまぎれたわりには、なにげに用意周到。その契約書は、感熱紙との3枚つづりで、ご丁寧に大衆点評と美団網のロゴが印刷されていた。にもかかわらず、その内容は「(合併した身内になった)大衆点評には掲載するな」という事実上の囲い込み――。

中国では営業マン個人へのマージン発生は必須である。契約(マージン)獲得への執着はさすがだし、「上有政策、下有対策」という有名な言葉どおり、決定事項について抜け道を考え出す執念を垣間見た思いだった。

美団-大衆点評は合併から1年経った昨年1月、非上場では世界最大規模(当時)の33億米ドル(約3700億円)を調達した。ただその際、その資金が2社にどう配分されるのか、何に使われるのかは明らかにされなかった。また今年になっても、配分と用途の論議がされないまま、大型資金調達の噂だけは消えることがない。

 

店舗側の負担増

美団-大衆点評の収益の基本は、サイトを通じて発生した売買の手数料と広告掲載費である。手数料は都市や店舗ランクに応じて上下するが10%ほど、広告掲載費はキャンペーンの大小で約2,000~10,000元(約34000円~17万円)と幅がある。

下の画像をご参考いただきたい。都市を「深せん」、料理種別を「川菜(四川料理)」に設定し、デフォルト(智能排序)で検索するとご覧のとおり。店舗は重複していない。なぜだろう。

次に、都市と料理種別は同条件のまま、評価スター優先(評価最好/好評優先)で検索するとご覧のとおり。一店舗も重複していない。不思議だ。

ようはサイト自体のSEOも、ユーザー評価も、何らかの意図が加えられており、なおかつ中国のユーザー(読者)は皆んな知っている、というのがグルメ投稿&グループ購入グルメサイトの現状である。それでもグルメ情報サイトの最大手であるため、ほとんどの店舗は依存せざるを得ないというのが実情だ。

たとえば、広告掲載費を節約したい店舗では、1元の目玉料理を掲載したり、わざわざ1元のティッシュやウェットティッシュをメニューに並べたりして、「価格優先」検索に引っかかりやすい工夫をする。

その一方で、広告掲載費を支払った店舗では、“1元・節約派”に負けないように、<50元のお会計で35元のクーポン券プレゼント>や<480元コースご注文3人分で1人分無料>など、過剰な値引きサービスで対抗する。そういったサービスを知らずに来店した客用に、エントランスやテーブルなど店内にPOPを並べ告知をしなければならない。

 

何もやらない名店

このように、店舗側の負担が大きくなり、どんどん疲弊していくその一方で、「絶対に損しない広告商品」(大衆点評幹部)を売るO2O大手は、大型資金を調達し、身内さえも蹴落とす陣取り合戦を続けている。

そんななか、ユニークな成功例も出てきた。美団や大衆点評などのサイトに積極的に露出しないし、ディスカウント系サービスは一切行わないという名店が増えているのだ。

もちろん店舗自体に実力があってこそ成り立つ戦略だが、こうした「何もやらない」店舗を探し出す特技をもった食通ユーザー(読者)のほうが、中国では確実に重宝する、というのが筆者の実感である。店舗が疲弊するぐらいなら、「何もやらない」名店を目指したほうがよっぽど効率的だろう。少なくとも筆者馴染みの名店には、日本人客はほとんど見かけないし、実際に連れて行けばとても喜んでくれるのだから。

20年繁盛し続ける潮州料理店(深せん・福田区)

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

 

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kanan
monthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。
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