深圳ローカル考(3)/O2O最大手(美団-大衆点評)合併から2年【前編】逞しい営業マン

合併直後の業界地図

O2O中国最大手の『大衆点評』と『美団網』が合併して、およそ2年が経つ。大衆点評はグルメ投稿サイト、美団網はグループ購入サイトと、棲み分ける専門家もいるが、実質似たり寄ったりのコンテンツとサービスを提供している。

この業界1位と2位の合併劇は、日本でいえば、「食べログ」、「Retty」、「ホットペッパー」、「ぐるなび」のうち、老舗のぐるなび以外の3社が突然合併したぐらいのトピックだった。

しかし2つのサイトが統合したわけでもなく、各都市で今でもあいかわらず存続している。業界3位の『百度糯米』は「会員プラス戦略」と銘打ち、グルメにこだわらない食料品や映画などの生活サービスプラットフォーム路線を進め、今年8月末には、百度糯米内の出前サイト「百度外買」をアリババ系「餓了麼」にあっけなく売却したばかり。美団-大衆点評の筆頭株主はテンセント(騰訊)であるので、おおざっぱにいえば、グルメサイトも出前サイトも、テンセントVSアリババの二強体制に集約されたかたちだ。

「餓了麼」の宅配電気バイク。一般住宅から充電するなど、充電スタンドの不備が社会問題化している(8/29遼沈晚報)

 

営業マンの手のひら返し

ここで慌てたのは営業マンである。筆者がいた武漢でもそうだった。IHG( インターコンチネンタホテル& リゾート)傘下のホテル(当時。現在は美聯地産グループ)と共同プロデュースした日本料理店には、合併直後から営業マンがひっきりなしに訪れ、合併した身内どうしであるにもかかわらず、おたがいの長所と短所をまくし立てるのである。

そもそも合併前は、大衆点評と美団網は“殿様営業”が基本だった。営業マンはあくまで店舗側が何度もお願いして来ていただく方々であり、より早くより良い情報をアップしてもらうために、店舗紹介というかたちでの過剰接待は当たり前だった。

営業マンはいずれもエリア担当制だった。もちろんノルマは厳しく残業も多いが、けっこうな役得もあった。過剰接待の次の段階、クーポン券や現金などの供与があることは想像に難くない。こうした行為は会社で厳禁されているが、無くなるわけがない。役人同様に「やり過ぎると痛い目に遭う」だけである。

美団app深センの「美食」画面。上段は秋をテーマにした特集。下段の「名店」「火鍋店」「四川料理店」コーナーへの掲載は有料。

 

また美団は社内カメラマンを抱えていた。そのカメラマンを手配する権利は営業マンが握っていた。ところがいつのまにか、学生アルバイトが撮影に来るようになり、聞けば社内カメラマンから雇われているという。此の営業マンにしてこのカメラマンありといったところだ。

それでも美団が撮影したデータには同社ロゴが入っており転用不可の体裁だった。合併後も撮影データの共用はさすがに行われていなかったが、大衆点評は撮影データを美団の社内カメラマンが雇用する学生アルバイトからちゃっかり入手していた。もちろん美団がクレームを出せるわけないと分かりきったうえで……。

こうした役得(権利)への執着と、その権利を使いこなす狡猾さ、またそれらを継続するためのプレッシャーに耐え得るメンタリティは、日本ではなかなかお目にかかれない。だからこそ、大衆点評と美団網の営業マンが自ら訪れるなど、まさに手のひら返しなのである。

次号の【後編】では、店舗と読者という2つの視点から見たレポートをお届けしたい。

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

 

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kanan
monthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。
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