深圳ローカル考(5)/海外進出しない飲食店の老舗『桃園館(広州)』
|「私ファースト」を圧倒し、「俺ファースト」の自民党が絶対安定多数を獲った選挙が終わった。日本はあいかわらずと落胆し、むやみやたらと海外進出を煽るような動きにならないことを願う。
本サイトの主旨にそぐわないだろうが、今回の拙稿は閑話休題とし、広州に足を伸ばし、著者お気に入りの広東料理レストランを紹介させていただく。
その前に――。
日本では未だ「海外進出しない」という選択肢のほうが正常で、多数派であると思う。そして、海外にいる日本人といえば、社命により異国で働いている日本人サラリーマンが多数派である。
深せんで名刺を1回交換しただけの日本人から、突然、電話をもらった。
「どこか美味しい広東料理の店を知っていますか?」
著者はいくつか挙げて教えた。その日の夜、その日本人から、非難の電話を頂戴した。
「残念ながらマズかった。ボラれましたわ……(後略)」
(だったら自分で探しましょう!)
――海外に長く居ると、こういう日本人が目立つようになる。
今回紹介する広東料理店で、日本人を接待したことがある。
「支店は日本に無いんですか?」
(だからお連れしたんです!)
――すべての海外進出が正しいとは限らない。
接待で外さない名店
そんな日本人サラリーマンが頭を悩ませるのは、出張者のアテンドだろう。とくにディナー。日本における「食は広州にあり」の影響力は絶大であり、著者の知るかぎり、たしかに深せんよりも、出張者が喜ぶ名店が揃っているのも事実だ。
たとえば、由緒正しい広東料理店として、海鮮メニューがとくに秀逸な『桃園館』は手堅いだろう。
地元の広州人が「特別な日」に訪れる、花園酒店(ガーデンホテル)内にあるレストラン。多くのガイドブックで「最高級の広東料理」と評されている。食にこだわる広州人にも自慢できるぐらい、敷居は少々高めだが、家族づれ客も多く、多くの家庭で「ご馳走が食べられる」レストランのうちのレパートリーの1つに挙げられている。
地元紙記者によると「広東料理の定番メニューにアレンジを加え、新メニューさえも広東料理を名乗ることを許される店」。そんな評価がまかり通るほどの、ある特定の分野のトップランナーであるからこそ、海外進出に無縁なのである。
飲茶もディナーも甲乙つけがたし
朝の7時半から11時までは飲茶タイムが設けられている。相場は1人150元ほど。ここで一般的な日本人は2つの発見をするだろう。今まで食べていた点心のルーツを再確認し、トップランナーたる由縁を舌で実感。そして、選りすぐりの食材でさらに工夫を凝らした点心の数々に、日本のそれとは比べられないという思い。
夜に3〜4人で訪れるなら、写真3点の他に、秘伝のたれでローストした「卤猪大拼盆」(198元)と中国酒の香りが漂う煮海螺(6個で198元)、堂煎黒椒牛仔骨(138元)をオーダー。紹興酒(190元~)の杯を傾けながら、上品な味わいに舌鼓をうっていだきたい。ちなみに、ライトアップされた綺麗な中庭を見下ろせる窓際の席が人気なので、予約しておくとよい。
英語併記のメニューもあるので、出張客にも嬉しい。帰国後もきっと、この店が主役の美食談議に花が咲くはずだ。
ADD 広州市東山区環市東路 368号花園酒店3階
TEL 020-8333-8989 (INN:3316 / 3317)
OPEN 7:30~11:00飲茶タイム / 11:00~14:00ランチタイム / 17:30~22:30ディナータイム
牛油果大蝦(78元*時価)アボガドと蝦の食感が絶妙
冬瓜带子湯(138元)あっさりの味の海鮮スープ
特色蒸桂花魚(340元*時価)熱々の漢方スープをひとかけして仕上げる。
白身がふわふわにに。
店内には中国伝統の壁画が飾られ、 歴史の中を漂っているかのよう。三国志の劉備、関羽、張飛が契の杯を交わした桃園をイメージ
【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部) 】
加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社 契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kanan
monthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。
http://www.kunlunlaw.com/
http://www.cd-j.net/
https://www.facebook.com/jiateng.kangfu