深セン経済事務所代表が語る、深セン発展の原動力

浜松町駅前の浜松町スクエアステューディオに事務所を構える「深セン市駐日経済貿易代表事務所」。深セン市と日本との経済交流を促進するため、深セン市政府によって2005 年に設立された事務所で、日本における深セン市の窓口として、日本ー深セン間の投資・貿易に関わるあらゆるビジネスサポートを無償で提供している。今回は同事務所の于智栄 首席代表に、最近の日本における深センへの関心の高まり、そして深セン発展の原動力について話を伺うことにした。

 

深センに本社を置くファーウェイやテンセント、DJIなどが世界的企業に成長するにつけ、日本でも「深セン」への関心が大きく高まっている。この状況について于氏は「私ども深セン市としては大変嬉しいことです」と率直な感想を漏らし、「歴史的側面」「地理的優位性」「国や市政府による計画とサポート」などがこれまでの深センの発展を支えてきたという見方を示した。

 

「歴史的側面」で言えば、深センは中国初の経済特区として率先的に外国企業を誘致、加工貿易を中心に経済発展を推し進めてきたことはよく知られるところ。また、深センは香港に隣接している「地理的優位性」や港湾都市である特徴、国や市政府の各種政策を活かし、急速な発展を遂げてきた。2011年に1.1兆元(約19兆円)だった域内総生産(GDP)は2017年には2倍にまで伸び(2.2兆元=約38兆円)、初めて香港のGDPを超えている。

 

また、イギリスのビジネス誌「エコノミスト」は「世界には約4,300もの経済特区が存在している」と報じ、深センを「最も成功している経済特区」に選出(2015年)。国の支援を受けられる「経済特区」と言えども必ずしも成功が確約されているわけではなく、深センの成功は世界の中でも異例と言えるレベルだ。

羅湖区のホテルから深セン市を望む。羅湖区は深センの中でも特に古い街で、かつては市の中心的な役割を担っていたが、最近は福田区や南山区が中心となっている

 

2016年にオープンした高層ビル「平安国際金融中心」。高さ約600mで、世界で4番目に高いビルとなっている

 

そんな発展を成し遂げられた理由として于氏は「個人的な見解になりますが……」と前置きしつつ、「香港に隣接していたことから、多くの資金が深センに流入したこと」「中国初の経済特区ということで多くの人材が外から集まってきたこと」をあげ、「現在は出稼ぎ労働者ではなく、イノベーションを夢見る若者たちが世界中から集まる魅力的な都市になっています」と述べ、時代の変化に合わせてモデルチェンジに成功できたことが、現在の深センの発展に大きく貢献していると分析する。

広東・香港・マカオ間の貿易自由化を推し進めるために誕生した、中国(広東)自由貿易試験区。総面積116.2㎢で、「広州南沙新区エリア」、「深セン前海蛇口エリア」、「珠海横琴新区エリア」で成り立っている。写真は「深セン前海蛇口エリア」

 

ただ、テンセントやファーウェイ、DJIといった名だたる企業が深センに本社を置いていることが若者を惹きつけているかどうかという点については「それほど大きな理由にはなっていないと思います」とし、「世界的企業は北京や上海にも数多くありますし、昔から深センには北京や上海のように、多くの国有企業があったわけではありません。国内外問わず、今深センを目指す若者たちはそうした大手企業に就職したいわけではなく、スタートアップやより大きなビジネスチャンスを追い求めているんです。そうしたパワーが深センを発展させる原動力になっています」と述べた。

深センでは現在、「コワーキングスペース」(シェアオフィス)サービスが盛ん。賃料の高い深センでは、必要不可欠なサービスのひとつだ

 

自転車シェアリングは街のいたるところにあり、“ちょい乗り”で出勤する若者も多い

 

中国政府は2016年5月に「大衆創業・万衆創新」というスローガンを打ち出し、国民による創業・イノベーションを呼びかけたが、これは中国全土へのお達しであり、何も深センに限った話ではない。にも関わらず、深センが特に若者たちを惹きつけ続ける理由としては、やはり深センの地理的優位性(香港に近いため、世界のマーケット変化にも敏感)、これまでの実績、成功例、そして加工貿易を中心に発展を遂げてきた経緯から製造業の集積地としての物作りのノウハウがあること、サプライチェーンが存在していることなどが他都市に比べて大きなアドバンテージになっているのだろう。

 

「良いプロジェクトさえあれば、深センで試作品を作ることは難しくありません。こうした利便性に優秀な人材、政府の支援政策、豊富な資金が組み合わさることで、良い経済発展循環が生まれているんです。深センは特殊な経済のエコシステムが働いていると思います」(于氏)。

 

2017年の北京のGDPは2.8兆元、上海は3兆元とまだ差はあるものの、前年比では北京が6.7%増、上海が6.9%増であるのに対し、深センは8.8%増という高い数字を維持している。「それほど差はない」と語る于氏には、深センの前をゆく2都市の背中がはっきりと見えてきているようだ。

 

 

于 智栄プロフィール

2000年7月、中国西北政法学院大学院を卒業(法学修士)。同年7月から弁護士業務に従事し、2002年8月に深圳市対外経済貿易合作局(現在「深圳市経済貿易及び情報化委員会」と改称) に入局。2011年1月に深セン市駐日経済貿易代表事務所の首席代表に就任、現在に至る

 

 

【ライター:飯塚竜二】

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