ロボットが接客する『無人ホテル』が深センに誕生【インタビュー記事】

無人コンビニの次は無人ホテル!?

深セン市にロボットが接客する「無人ホテル」が出来た。
調べてみるとスタートアップ企業が運営しているとのことで、早速現地に見に行ってみた。
「楽易住智慧」という名前のホテルで、さっそく筆者である佐々木が、VP(副総裁)へのインタビューを取り付けたので、その内容についてまとめてみた。


佐々木:「楽易住智慧」無人ホテルについて教えてください。

VP(副総裁):無人スマートホテルのポイントとしては、ロボットや端末を使ったスマートチェックイン、センサー技術によるデータ収集など、全ての作業を無人で行うところです。
我々楽易住は、主に3つの事業を行っています。1つはIoTクラウドプラットフォームでデータ収集と分析を行うこと。2つ目は人工知能の研究開発で、ロボットとその制御システムや端末設備を作っています。3つ目はこの無人スマートホテルを運営しています。

収集したデータは自社で開発したクラウドサーバに貯めていき、ロボットや端末などの管理システムも自社で研究開発しています。
顔認識センサー、スマートロックなどの設備をホテルに取り付けていて、全てのデータはクラウドでつながっています。

ユーザーの行動パターンなどが全て設備を通してクラウドに送られていて、将来的な製品開発のためにデータ解析をしています。無人スマートホテルはIoT応用の典型的な形だと言えます。

使い方としてはまず初めに、アプリかWeChatのミニプログラムから部屋の予約をして、予約が完了したらシステムが自動的にSMSでお知らせします。
次に、ホテルに着いたらチェックインの手続きをします。セルフチェックイン端末を使い約30秒で顔認識を完了させます。顔認識が完了するとロボットが部屋まで案内してくれます。

最後に、部屋に入る際はカードキーの必要がありません。スマートロックを使っているので、パスワードを入れるだけで鍵は開きます。また、スマホからも鍵を開けることが可能です。これは国内でもあまり導入されていないので、なかなか体験できない所です。

部屋に入ると自動的に電気やテレビなどがつきます。
エアコンも適温に設定され、カーテンも自動的に開きます。宿泊の際に水やスリッパなど必要な場合は電話一本でロボットが部屋の前まで持ってきてくれます。


ホテルにはロッカーもあり、荷物を預けることは可能です。もし部屋の中に忘れ物をしたら、ホテルの清掃員が調べてから携帯にお知らせを通知してくれます。忘れ物が見つかった場合はホテルに来てQRコードをスキャンするだけで、ロッカーから忘れ物を回収することが可能になります。

ホテルのベッドやソファは、4つ星ホテルのレギュレーションに合わせた物を置いています。この一通りの設備、ホテルを守る無人当直システム、サービスのクオリティも落とさないように注意しています。

佐々木:現在、国内に競合他社は存在しますか?

VP(副総裁):ネットで“無人ホテル”と検索してみれば分かりますが、たくさんの広告ページが出てきます。そこに電話をして聞いてみてください。そこに出ている全てがデザインハウス系の企業や、スマートハードウェアの企業です。
クラウドプラットフォームや設備、管理システムを自社開発し、ホテルの運営までやっているところは全国で我々しかいません。

 

佐々木:創業メンバーはどのようなチームですか?

VP(副総裁):私達の会社は2016年に設立し、現在シリーズAのフェーズまで来ています。創業メンバーは平均年齢が35歳で、ホテル運営の経験者とスマートハードウェアエンジニアのチームです。なので我々のチームは無人ホテルをやるにあたって、技術方面、専門的なホテル業務においても深く理解できています。
簡単な例を挙げると、ベッドの下にセンサーを付けて、夜中にお客さんが起きて足をおろした際に、足元の照明が付くので、すぐにスリッパを見つけることができ、同じ部屋で寝ている人の邪魔をすることがありません。
そのような細やかなホスピタリティを提供できるのも、ホテル運営のノウハウがあったからなのです。

佐々木:なぜホテルを無人化しようとしたのですか?

VP(副総裁):我々の創業者はホテル業界に長くいて、伝統的ホテルの弊害を熟知しています。初期投資が大きい、旅行サイトとの提携サービスコストが高い、不動産コストが高い、人件費コストが高いなど。
これらの要因は、ホテルの利用率が高くても営業収入が減少する原因です。

また無人ホテルは豪華なロビーがありません。ロビーとして使う面積を客室に使うので、初期投資回収率を上げることが可能になります。これについては、伝統的なホテルと比べると8%~15%のコストダウンが可能になります。

同時に我々は自社開発のアプリがあるので、現在70%のユーザーが自社アプリや、WeChatミニプログラムを使って予約をしています。その他の20%が旅行サイト経由となっており、その分のコストを抑えることが出来ました。

また、ホテルを無人化することで、人件費を削減することが可能で、一つのホテルにつき1人のマネージャーさえいれば運営が可能となります。
清掃スタッフについては、アプリから履歴書と健康診断書をアップロードし、審査に通ると清掃の仕事を受けられるようになるという、シェアリングの仕組みを取り入れています。
これには現在約2000人が登録しており、自社で清掃スタッフを雇用する必要がありません。

佐々木:無人ホテルの今後の発展について聞かせてください。

VP(副総裁):伝統的なホテルのサービスは、“部屋の外のサービス” ですが、無人ホテルはビッグデータを利用しユーザーの要求などを把握し、部屋の中でも便利なサービスを提供できます。
また、無人化することによってユーザーのプライバシーも守られるので、将来的に無人ホテルは必ず発展していくと思います。

我々の将来的な目標としては、無人ホテルを“無料”で利用してもらえるようになることです。
初めてホテルを利用するときは200元(約3400円)、もしユーザーが電気や水などの資源を無駄にせず、ホテル内の有料サービスをよく使うと(将来的にホテル内のすべてのものはアプリ上で購入できるようになる。)システム上で信用が上がり、ホテルの宿泊費がどんどん安くなり、最終的には無料にまでなる。

このような形で常に最適化、自動化を行うことで、常にイノベーションを起こしていこうと考えています。

 

【ライター:佐々木英之
中国深センの富門グループ(Richdoor Group) にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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