一歩先を読んでいたファーウェイ、独自OS「鴻蒙」を正式発表!

2019年8月9日、通信機器大手「ファーウェイ(華為)」の松山湖基地(広東省東莞市)にて「開発者大会」が開催され、コンシューマー事業グループ最高経営責任者の余承東氏が自社OS「鴻蒙(※)OS」(英語名は「Harmony OS」)を正式発表した。

※「鴻蒙」は中国古代の伝説にある、世界が創造される前の混沌とした時代を指し、万物の萌芽時期を指す言葉である。なお、「ファーウェイ」の商標の多くは中国神話『山海経』から生まれており、今回の「鴻蒙」もそうした流れのひとつである。

「鴻蒙」は汎用性の高いマイクロカーネルベースのOSで、モジュール化を実現しており、様々なデバイスに対応している。

余氏は「Googleやアップル等がOSを出しているが、依然として課題やネックがあります。Googleのエコシステムは分裂していて、アップルのエコシステムは閉鎖的です。ファーウェイは未来のOSを作る必要があります」と述べた。

また、「『鴻蒙』はマイクロカーネルベースで、様々なシーンに対応できるOSです。スマートモニター、スマートモビリティ、ウェアラブル、スピーカー、スマホ等のデバイスをつなげることが可能です。安全性については、マイクロカーネルはrootがなく、細かい権限コントロールが可能となり、根底からシステムの安全性をアップデートできます」と説明した。

「鴻蒙」は以前から業界で噂になっていた。今年5月の時点で、「ファーウェイ」が国家知識産権商標局で「華為鴻蒙」の商標を取っていたことが判明しており、この商標は第9類(コンピューターや通信などの設備等)と第42類(技術サービスや研究等)の申請であったことも合わせて確認されていた。ちなみに、申請日時は2018年8月24日だった。

「鴻蒙」は早ければ今秋に、遅くても春節までにはリリースされる予定で、アンドロイドとの互換性も確保されるという。

余氏は「全てのシーンはスマートになる時代が来ている。ファーウェイは1歩進んだ操作システムのプラットフォームが必要で、かつ全てのシーンに対応していて、デバイスを超えたプラットフォームの能力、低遅延、高い安全性を引き出す能力を求められます。これがまさに『鴻蒙』の雛形となりました」と述べており、「鴻蒙」の出発点はAndroidやiOSとは異なると言える。スマートフォンやPCだけでなく、全シーンに行き渡らせられる操作システムなのである。

過去の伝統スタイルの中で、新しいデバイスが出てくるたびに新しい操作システムが誕生してきた。「ファーウェイ」は10年ほど前から、将来の「スマート時代」という新しいシーンへの対応に取り組み始めた。

「鴻蒙」は「ファーウェイ」が生み出した新時代の産物であり、軽量化、小型化、機能のアップデート等の部分で強みがあり、スマートウェアラブル、スマートモニター、車載設備、スマートスピーカー等の各種スマートデバイスにも応用できる。デバイスの枠組みを超えてつながるエコシステムとなり、消費者は新しいスマート生活を享受できるはずだ。

「鴻蒙」と「米中貿易摩擦」

「鴻蒙」の発表と昨今の「米中貿易摩擦」は切っても切れない関係にある。簡単にこれまでの経緯をまとめてみたい。

今年5月15日、米国のトランプ大統領が中国に対して「米国内で中国製の通信設備等を使わない」という内容を発表し、5月20日にはAndroidの開発企業であるGoogleがトランプ大統領の政策に従い、暫定的に「ファーウェイ」のAndroidスマホに対するサービスの停止を発表した。

この時、「ファーウェイは大丈夫なのか?」という意見が多く聞かれたが、実はその発表の前の5月17日深夜、同社の董事会会員であり、海思半導体(Hisilicon)の総裁でもある何庭波氏は「ファーウェイ側にも数年前から準備してきたものがある」と発言していた。そして5月21日には、余氏が「操作システムの“準備”はあり、今秋にはリリースができる」と発表している。この時に触れられていた操作システムこそが「鴻蒙」だ。

この一連の流れから見ると、トランプ大統領と「米中貿易摩擦」は「鴻蒙」を世に発表するきっかけを作ったとも言え、「ファーウェイ」が数年前から自社OSの準備を進めていたことがよくわかる。もちろん、米国の存在を意識した上で準備を進めていた部分はあるだろうが、一歩先を読んでいた様子も伺えるのだ。

今回の発表には細かい技術的なことも含まれているが、エンジニアでもない筆者は専門的なことについては触れていない。しかし、ユーザーインターフェースをはじめ「鴻蒙」がどのようなOSになるのかが、今からとても楽しみである。

関連リンク
https://mp.weixin.qq.com/s/E1HaGhDRvBuvoLaFnGUvDQ

http://www.nbd.com.cn/articles/2019-05-17/1332687.html

記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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