「我々は行動する」深セン、新型コロナウイルス対策へ行政と企業が動く

2020年1月から日本でも大きく騒がれている新型コロナウイルス。2月9日現在、中国国内の感染者は4万人近くとなった。深センは366人となっており、湖北省を除外すれば重慶、温州に続く3番目に多い市となる。


各地域での対策や行動は異なっている。深センのある広東省では2月9日まで春節休みが延長されたが、深セン市の現状と動きをまとめてみたい。 

 

深センでは1月下旬、「マスクなしでは地下鉄に乗車できない」という規則が発布され、公共交通機関の利用はマスク必須となっていた。この時点でマスクをしている人は7割程度で、春節休みに入っている深センでは、市内に残っている人も外出を控えており、ゴーストタウンと化していた。筆者は深セン市の病院敷地内に住んでいるため、病院の様子は毎日のように確認することができたが、1月29日から病院に3箇所ある入り口の内2箇所が封鎖され、正面入り口のみ出入りが可能となっていた。当時、病院は閑散としており、混雑する武漢の病院とは大違いであった。 

現在、深センで取られている措置はいくつかあるので、以下にまとめてみる。 

①各マンションや団地群等、コミュニティごとに簡単な封鎖が行われており、住民の出入りには体温チェックや部外者の侵入を阻止する体制が敷かれている 

②深セン市内への車による移動では、体温チェックが必ず行われる。また、事前のネット登録も義務付けられた 

③香港へのイミグレーションが半分以上閉鎖されており、開いているイミグレーションも香港側が中国からの入境者を2週間隔離する対策を取ったため、事実上の封鎖に等しい 

④一部の地下鉄、バス路線の運休 

⑤ショッピングモール、飲食店等は2月中旬、もしくは下旬まで休業を延長 

⑥休暇明けの仕事開始にあたっては各自治体に申請が必要で、認可が下りるまでは自宅待機をしなければならない 

 

細かいものを含めれば他にもあるが、このように様々な措置が取られている状況だ。 

逆に深セン市政府側が市民に対して行っているのは以下の通りである。  

①大家は2ヵ月の家賃を減免するように政府が呼びかけ 

②オフィスや工場等の電気代や水道代を政府が一部負担 

③稼げないタクシードライバーのために、タクシー会社に対して車一台につき3000元の補助金 

④財務会計業務の遅れに対する罰則を解除 

⑤社会保険や住宅積立金の支払いの遅れに対応 

⑥旅行業や飲食業等の一部業界において、条件を満たせば補助金を支給する 

こちらは各区によって多少の違いはあるが、現地企業や市民に対しての政策も数多く出されている。なお、筆者が暮らす羅湖区では、これらの対策に5億元(約80億円)を投入すると発表した。  

民間企業の取り組みとしては、「DJI」が農業ドローンを使った消毒作業に協力しており、その様子をライブ中継したり、「テンセントクラウド」が早々に北京大学や清華大学の研究チームに対して、クラウドサービスを無料開放したり、遠隔出勤が可能なようにクラウド会議サービスを提供したりしている。 

このように深センの動きは極めて迅速で、テンセントニュースの関連特設サイトも日に日にUIが変化して見やすくなったりWeChatのミニプログラムで感染者がどこから出たか一目で分かるようなアプリが提供されたり、デリバリーサービス「美団」が無接触配送を取り入れ、商品がドアノブに掛けられたりと、様々な対応策が次々と誕生している。 

 

深セン市の公式行政アプリとされている「i深セン」では、24時間オンライン対応窓口が設けられた。ここではコロナウイルスに関する相談や企業に対しての政策、補助金等、多岐にわたって問い合わせができる。深セン市内には「我々は行動する」という標語があちらこちらに掲げられており、深セン政府や企業の対応の早さにはとにかく驚かされる。 

また、武漢に臨時で建設された「雷神山病院」には「ファーウェイ」のチームが入り、5G電波でカバーし、オンライン動画での管理、診察、手術を導入したようだ。今回を機に無人配達の実用化が広まるとも言われており、すでに一部地域で行われていたドローンやロボットによる配送の実装が各地で加速化するかもしれない。なお、深センにも「人民第3病院」の横に臨時病院が建設されるという。 


 

この週末、休みを故郷で過ごしていた人々が徐々に深センに戻り始めているが、飛行機や高速鉄道の本数が少なくなっている影響で、予定通り戻れない人々が筆者の周りには数多くいる。先述した仕事開始のための認可にも遅れが出ており、ほとんどの企業が2月17日まで活動できない状況だ。  

春節が終わり、人々の移動が活発化することで感染リスクの上昇も懸念されるが、今後深センがどのようになるのかはまだ見えてこない。出来るだけ早い収束を願うばかりだ。 

記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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