中国で再び脚光を浴びる「無人化」、生活のスマート化が大きく後押し

新型コロナウイルスの影響下にある中国では今、ドローンや無人車等、非接触で作業に当たれる無人化技術の整備、適用範囲の拡大が加速している。 

 

2020年26日、1台の救援物資ドローンが新昌県ウイルス対策センターへ輸送業務を完了させ、これが全国初の“都市空中輸送”の例となった。同日、武漢市の「京東(JD.com)」仁和ステーションから武漢第9病院まで医療物資を無人車が配送したこれは新型コロナウイルスが拡大してから、武漢で行われた初の無人車による配達となった。この無人車は京東物流が自主開発を行っている物流配送ロボットである。 

 

212日、武漢六七二病院で、「LuckinCoffeeの無人コーヒー機“端即購”が投入された。また、“端即購”は武漢協和病院、同済病院、漢南区中病院等にも投入され、医療関係者に無料で温かいコーヒーを提供している。 

 

武漢の火神山病院は建設完了後、院内にある無人スーパーをすぐに稼働させ、初日は約200人が利用した中国では鐘南山という名の83歳の医師( 2003年、SARSの感染拡大防止に大きく貢献した医師)が「新型コロナウイルスの拡散防止には隔離が必要」と忠告したことがきっかけとなり、無人販売、ドローン、無人輸送等の無人化技術を加速させている。非接触でも提供できるサービスが大きく役に立っているのだ。 

ドローンはすでにウイルス対策の“神器”となり、通知・警告を促すスピーカー、消毒作業、体温測定、巡回、物品輸送等に活用されている。 

 中国では先日、ある村を舞台に「マスクをしないで外を出歩かないでください、何度も注意をしても聞かないから、こうやって飛んできてるんです……」とドローンがアナウンスする動画が投稿され、注目を集めた。 

 また、ドローンにサーモグラフィカメラを搭載し、非接触で遠隔体温チェックを行っている場所もある。ドローンによる消毒作業も行われているが、これは農薬の散布同様、人間が作業に当たるよりもはるかに効率が高い。 

 

現地報道によれば、浙江省、広東省、湖北省、湖南省、北京等の多くの病院隔離区域において無人配送が導入され、食事や薬の配送、病院内の医療ゴミの回収等に活用されている。 

世界最大の自動運転オープンプラットフォームと言われる「百度」の「Apollo(アポロ)」も最前線で活躍している。隔離区域にて清掃消毒作業をしたり、食事やモノを運ぶなどの無人サービスに自動運転プラットフォームを提供している。

 

210日、「百度」はウイルス対応ソリューションとして医療現場の最前線向けに、無料で低速ミニ車両と自動運転クラウドサービスを提供すると発表した。また、 「Apollo」は北京の隔離病棟のほか、青島の病院に合計30台近い無人消毒車を無償で提供している。 

こうした動きに並行して、山東省では倉庫から2kmほど離れた村の指定場所に無人配送「小楽」で野菜等を運び、品を下ろしたら、自動で倉庫に戻るという実験も行われていた。同無人配送車は1回で1t、1日10tの物資を運ぶことができるという。 

無人販売はブームこそあったものの、それ以降はたいして広がりも見せていなかった。筆者が暮らす深センにおいてもテスト的な店舗のみで、店舗数が飛躍的に増加したという印象はない。 

 しかし、今回の新型コロナウイルスの脅威によって、無人販売は見直されている。前述の火神山医院もそうだが、「馬鮮生」「美団」「餓了麽」「多点Dmall」「便利蜂」「ケンタッキー」等の企業は非接触配送サービスを積極的に導入しており、「HeyTea」は以前から進めていたスマートBoxを使用した商品ピックアップの展開を加速させている。 

 

つまり、完全な「無人店舗」というよりは、出来るだけ人と接触しないようにする「無人販売」の導入が進んでいる。セルフレジ、Box利用、配送等、これらすべて(もしくは一部)を含めた無人化、自動化が見直されている状況だ。 

中国では近年、生活のスマート化が急速に進んだことから、今回の新型コロナウイルスのような特殊な事態において無人化を加速させる流れになった。中国では新型コロナウイルス発生以前から、ネットで購入した商品が数日後に家の下に置かれていたり、物流スマートBoxに入れられていたり、配送スタッフと顔を合わせないことは日常化していた。今回、メディア等は「非接触配送」という言葉を使用しているが、すでにあったサービスの“進化系”とも言える。 

いずれにせよ、生活のスマート化は、緊急時にもうまく機能することが証明された。経済的打撃を受けている企業も多いが、こうした新しいテクノロジーが次々と現場に投入され、実用化されていくことは、中国の特徴とも言えるかもしれない。 

 

日本にそのまま中国のモデルを当てはめ、運用することは非常に難しいが、今回のコロナウイルスの対応を見ている限り、日本は本当の意味で変わらないといけないーーそう強く感じた次第だ。

 

 

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記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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