深圳ローカル考(17)/視察ツアー後の晩餐スポット~楽園路海鮮街

中国随一のスタートアップ都市として脚光を浴びる深圳は、もともと移民が集まって出来た街です。そのため、中国の他都市にありがちな、ビジネスを行ううえの諸刃の剣、いわゆる地元民派閥がほとんどありません。

強いて言うなら、潮汕人や客家人を含む広東人が幅を効かせていましたが、年々影響力が薄れてきているというのが肌感覚です。一般的に仕事シーンでは普通語でコミュニケーションをしますし、誰にでも公平にチャンスを与えてくれるという意味では、懐が深い都市文化をもつと言えます。その一方で、共通の価値観が「マネー」のみにならざるを得ないという意味では、現実的な世知辛さもしっかり持ち合わせています。

こうしたなかで、しぶとく、かつ逞しく生き残ってきたのが、今回ご紹介する楽園路という海鮮レストラン街(羅湖区)です。

深セン市羅湖区
『宝発海鮮野味食館』『湛江漁港』『金稲園砂鍋粥』など古くからの名店が軒を連ねる

 

■視察アテンドの〆に

楽園路は羅湖区の湖貝新村にある全長300メートルほどの通り名です。

2000年ぐらいまでは、湖貝新村は「愛人村」と呼ばれ、香港人に囲われている女性たちが多く住んでいました。その自分の彼女に会うために、毎週末国境を越えて訪れる香港人の需要があったから海鮮レストランが相次いでオープンしたとか、この通り沿いにある交通警察署の幹部が、香港人の需要を当て込んで土地の一部を開発したとか、いろいろな噂があります。

深圳で海鮮料理といえば、市の中心部から車で1時間ほどの塩田区も有名です。しかし往復移動で2時間はロスが大きすぎます。この点、楽園路は、羅湖区のど真ん中、東門と呼ばれる繁華街(深圳の原宿)に近いロケーションにあるうえに、実質24時間営業しており、観光地化している塩田区よりも料金も安くお手頃で(というか爆安)、視察ツアーの後に訪れるには便利でもってこいのアテンドスポットになります。

■「お一人様・1点限り」原価割れ特価メニュー

派手なネオンや、元気な呼び込み、繁盛ぶり、大型レストランのスケール感など、日本人にとって「中国らしい」シーンが目白押しです。

各店舗、1年365日24時間、客の奪い合いで鎬を削っているので、毎日、数種類の「特価メニュー」を提供しています。そのメニューは、なぜか「8元」とか「10元」、ときには「1元」などの均一料金にまとめられています。市内のスーパーで調理していない材料を買うより安いわけですから、しっかり原価割れです。

店側としても売れば売るほど損するので、一時期は「1テーブル・1点のみ」とか「1グループ・1点のみ」と制限していました。ところが結局「お一人様・1点限り」に落ち着いたようです。客としては来店するなら大人数のほうがお得でお腹いっぱいになれるということです。

まずは顧客を捕まる。席に座らせてからが勝負――という顧客の導線を最も重視するスタイルは、中国ビジネスの王道です。

かく言う著者も、深圳にいた16年間、幾度となく楽園路でアテンドをしてきました。相場は4-5人で600元ほど(約1万円/アルコール含む)。皆さん満足してくださり、打率は10割、外したことがありません。料理のクオリティ以外に、深圳らしい活気や地元民の金銭感覚をも体感できるエリアとしてお勧めです。

深セン海鮮
新鮮は当たり前。店頭で材料を選び、調理法を伝えて注文する。

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kananmonthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

 

 

 

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