若手社長日記–中国の税制改革が日系企業への影響(国税と地税が合併)

最近、中国の議会にあたる人民代表大会の会議があり、その中で、税制改革の方向性について、情報が開示された。現在、検討中の改革内容及びそれが日系企業への影響を分析してみたい。

  • 増値税の改革

 

現在、一般納税者の増値税の税率が17%、11%と6%の三種類があり、この三つの税率を二つに統合しようとしている。結果的に、製造業やメーカーが適用している17%の税率が少し下がることになると見られている。

 

増値税が間接税で、企業の利益に直接影響しないが、減税されたことによって経済が活性化し、景気が良くなる部分が少し出てくる可能性がある。また、減税された部分の中に製造メーカー、商社、消費者の中で、一定の割合でシェアされるだろう。

 

例えば、ある会社の商品の販売価格が100で、お客様に販売される場合、117100+17)の代金をお客様から頂戴する。もし、税率が15%で販売される場合、税込み価格を変えない場合は依然としてお客様から117を頂戴できる場合、企業の販売価格が101.74117/(115%))になる。1.74の部分が企業にとって、利益の増加額になる。

 

変わりに、企業が調達する材料も同じようなことが発生する。仕入先との値段交渉も重要で、それによって企業のコストダウンのチャンスになる。

また、新しい税率へのシステムの改正など、面倒くさい管理作業も対応しないといけない。

 

  • 個人所得税

 

個人所得税の改革が近いうちに、以下の二つの内容の可能性がある。

 

  • 中国人の基礎控除の切り上げ
  • 子育て費用、病気の特別医療費用の控除

 

いずれにしても、従業員の手取り金額が多少アップすることになる。企業としては、管理作業が多少増えることになるが、対応するのに大きな困難がないだろう。

 

  • 不動産税

 

今まで、個人の住宅に対して、不動産税を課税していない。但し、課税する方向性は何年前から決まっていた。これは高騰する不動産の価格に対して、一つの爆弾でもあり、中国人の中ですごく関心が高かった。今回の会議の中に、2020年以降に不動産税を課税する方向性を示唆した。不動産税の課税への準備作業が難しい上、それによる経済への影響もすごく懸念されている。

 

この情報が正しければ、2018年と2019年に課税しないことを確認でき、不動産への影響がとりあえずなくなり、この二年間においてバブルがはじけるリスクが小さくなる。また、この期間に課税する具体的な案などが出たら、それに対し注目する必要があるだろう。

 

いずれにしても課税する方向がほぼ確実になり、庶民の不動産への投資意欲の抑制になる。代わりに株や実際の産業への投資が期待される。不動産による牽引効果がなくなり、一定期間経済が悪くなるかもしれないが、無事に解消できれば、もっと健康的な経済になる。

 

  • 税収徴収管理法の改正

 

税収徴収管理法が税収の徴収管理の基本法律で、最も重要な税法の一つと言ってもいい。その改正案の意見募集稿が二年ほど前に開示されたが、今年になってようやく審議される予定。今回の改正の中に重要な内容がたくさんあるが、最も影響が大きいのは:

 

  • 個人の納税番号の確立
  • 銀行機関と税務局との情報の共有

 

今まで、日系企業が中国ローカル企業と競争する際に、よく痛感するのは価格の差である。その中に、中国ローカル企業がコンプライアンスを守らず納税していないことによることが大きい。

 

今回の改正によって、中国ローカル企業の現金取引や個人口座を利用する脱税行為が制限されることになる。従って、コンプライアンスを守る日系企業にとって、今後、より平等の環境で戦えることになる。

 

また、この改革によって多くの業界においては、零細企業が淘汰され業界で最後まで残れる企業がより高い市場シェアと高い利益率が期待できるだろう。

 

苦戦されている企業は辛抱したほうが良いのかもしれない。

  • 国税と地税の合併

 

文章を書いている間に、組織機構の改革の案が公表された。国家税務局と地方税務局が合併されることになった。具体的な案がまだ分からないが、以下のような影響があると考えられる。

 

  • 窓口が同じにすることができれば、企業の申告作業がやりやすくなる。
  • 一つの税務局が納税者のすべての情報を把握できるので、税務リスクがより高くなる。

 

以上、上記の税制改革について、何かご興味がございましたら、ぜひご連絡ください。ご返事を期待しています。

 

私は中国人の公認会計士で、大手監査法人で日系企業の税務コンサルタントを9年間経験し、2012年4月から仲間と一緒に独立しており、2013年7月にDenchiコンサルティングを設立しました。日系企業、外資企業、中国企業のための投資、再編、税務のコンサルティングを業務としています。
創業5年目を迎えた会社なので、ビジネス界の大先輩と比べると、自分のことを若手の社長としか言えません。
今後、中国人の視点からみる中国の面白いことや経済の動向、日系企業に関係する投資、税務ニュース、事例、中国での株投資などなどについて、自分の考え方をシェアさせていただき、ご覧頂ければ幸いです。

Richard Wang |王銳

CICPA|中国 公認会計士

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