おとなの社会科見学・香港編(2) 鯉魚門

この連載では、深圳をビジネス視察で訪れた際に立ち寄ると面白い、お隣香港の定番スポットをお伝えしていきます。

香港日本人補習授業校で教鞭をとる傍ら「おとなの社会科見学」を主宰する、エデュケーショナル・アクティビスト(教育活動家)の森山正明氏の協力を得ながら、お届けします。

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アテンドディナーの王道といえば海鮮料理。深セン市内で海風に吹かれながら、海鮮料理を楽しもうとするなら、南山区の一部のエリアか、塩田区にある海鮮街へ足を伸ばすと良いでしょう。

ひと昔前であれば、深センのほうが安かったのですが、ここ1-2年でコスパがほぼ同じになっている(ように感じる)のが、香港の鯉魚門です。ビクトリア湾の東の出入り口となっている場所にあります。

鯉魚門の歴史は以外と古く、四つの村から成る集落で百五十年以上の歴史を持っています。英国統治による香港開港時すでに定住者が存在していました。多くは石工業を代々営み、二十世紀に入って養豚や漁業に従事する人も増えましたが、鯉魚門は湾内が手狭であったため漁港としては対岸の筲箕湾が栄えました。

一九六〇年代、観塘の工業ビル発展に伴い外食の機会が増え、海鮮料理レストランの第一号店がオープン。その後、新しい滑走路が完成した啓徳空港に近いことから外国人観光客も訪れて活況を呈するようになりましたが、香港国際空港がランタオ島に移転し、市中にも多くの海鮮料理レストランができたため、以前ほどのにぎわいはなくなりましたが、最近の中国人団体ツアーの人気スポットとなり、再び活況を呈しています。

この鯉魚門の一番の見どころといえば、レストランと鮮魚店、海産物店が軒を連ねる迷宮のような路地です。幅二メートル足らずの道の両側にシャコやエビ、さまざまな魚の泳ぐいけすが並び、さながら水族館のよう。ここではレストランの店先で物色した新鮮な魚介を調理してもらう。大勢の友達と一緒に行き、どの海鮮を食べるかをわいわいしながら選ぶのは、ちょっとしたアトラクション気分を味わえます。

そして、迷宮のようなレストラン街を過ぎると、目の前にビクトリア湾が広がり、対岸に香港島の高層マンションと山並みを眺めることができます。そしてここには、天后廟が建立されています。鄭成功配下の武将、鄭建の孫で鯉魚門を拠点に活動した海賊の鄭連昌によって一七五三年に建立。一九五三年の旧暦四月五日、廟の上空に天后の姿をした雲が現れて大ニュースとなり、多くの寄付が寄せられて大規模な修復が行われました。その工事中「天后廟は鄭連昌が建立し子孫が管理する。乾隆十八年春」と書かれた石碑が発見され、その由来が明らかになり、大きく報道されました。

ここへは、ミニバスや路線バスのほか、MTR将軍澳線の油塘駅からは徒歩圏内。また香港島の東にある西湾河からのフェリーもあります。街中や離島の海鮮料理もいいですが、アクセス便利で海鮮市場であるこの鯉魚門に、家族や友達と気軽に訪ねてみてはいかがだろうか。満腹になったら海岸沿いの歴史散策、心許樹という神木もあり、開運や縁結びを祈ることができます。友人、家族とぜひ訪れてほしい場所の一つです。

満腹後のビクトリア湾の景色は、しばし日常を忘れさせてくれます。おなかも心も満たされ、明日の活力源になると思います。

 

 

 

【構成:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部) 】

華南NET代表。東京外国語大学在籍後、講談社契約記者、深圳大学留学を経て、華南(香港)日商企業信息資訊有限公司(華南NET)設立。CEO兼編集長として日本企業向け会員制ビジネス誌を企画・発行。プロモーション・マーケティング支援、法務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

 

【写真・文:森山正明(教育活動家)】

海外帰国子女向け作文・面接・自己PR受験対策サイト「森山正明の海外帰国子女向け、作文&プレゼン入試 実践対策」編集長。香港日本人補習授業校で教鞭をとる傍ら「おとなの社会科見学」主宰し、海外在住の日本人に新たな出会いや歴史・社会を学ぶ機会を提供している(のべ参加者2300名)。香港在住。二児の父。

 

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