顔でお買い物!? 深センの新型ハイテク無人コンビニをレビュー
|深センで「普通の無人コンビニ」はすでに珍しいものではなくなってしまった。
最近現れたのは、顔さえあればお買い物ができてしまうという「顔面会計無人コンビニ」だ。
要するに財布やスマホを持って行かなくても、顔だけで買えてしまうのだから驚きである。
このサービス、中国基因という遺伝子解析を行う会社の子会社で、実験的にスタートしたばかり。
なぜ、遺伝子解析の会社がコンビニ? という疑問もあるが、まずはどんなサービスなのかを試してみた。
まず、最初だけ「闪士多(シャンスードー)」というサイトからユーザー登録をして顔の画像を撮影、WeChatウォレットから一定額のお金をこのアカウントに移動させておく必要がある。
この作業さえ終わらせておけば、あとは顔で入店から精算までを処理できることになる。
では、顔の登録が終わったあとの流れを動画でご覧いただこう。
思った以上に顔をスキャンするスピードが早く、すぐに入口の扉が開いた。
しかも、その際に利用者の名前を読み上げ「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。
そして、中に入ると本当に誰もいない。。。
全ての商品にRFIDタグが貼り付けられており、食品だけでなく電池やティッシュなどの日用品からスキンケア商品まで、品揃えは普通のコンビニと同じくらいのラインナップだ。
お会計の際は、精算ブースに商品を持って入り専用の台の上に置くことで、一瞬にしてRFIDタグがスキャンされ、値段が表示されるようになっている。
このタグ、誰かが1枚ずつ貼り付け作業をしているのだろうか?
よく考えると、店内でこのタグを剥がしてしまえばスキャンされず、会計せずに持って帰ることができてしまう。
しかし、万が一防犯カメラでバレたときには、顔とWeChatアカウント、さらには銀行口座と身分証明書が紐づいているため、ネット上の信用が下がってしまう。
それを恐れてユーザーが万引き行為をしない、といった計算がされているようだ。
それにしても、商品ごとのタグの生産や貼り付け作業のことを考えると、かなりのコストがかかっているように思える。
親会社が遺伝子解析ビッグデータの会社ということもあり、売上や利益率なんかは見ていないのかもしれない。
わずかな利益でもキャッシュフローになるのであれば、店舗数を広げて消費者動向を数値化し商用データとして利用する考えのはずだ。
今回は、昔から中国で大人気の「王老吉(ワンラオチー)」という甘い薬草茶を購入した。
値段は従来のコンビニで買うのと同じ3元(約50円)で購入できた。
なんともスマートなこの顔認識無人コンビニ、家の近くにあったらとても便利だと思った。
このシステムが日本で普及すれば、労働力問題の解決策になるかもしれないが、そもそも中国と日本のコンビニでは根本的な違いがある。
日本のコンビニには、ATM、宅急便、切手や印紙(税金)の取り扱い、など多くの機能があるが、中国にはそれらの付加サービスが一切ない。
それと、日本ではWEBマネーが乱立してしまっていることで電子決済が流行っていない点と、電子決済に身分証明書が紐づいていない点、などなど無人コンビニがマーケットフィットしないという現実に直面する。
このように、お金(紙幣)を使わなくても良いインフラを構築した中国は、デジタル経済に遅れを取る日本との距離を広げながら急速に姿を変えていく。
記者:白井りょう(深セン経済情報)