史上最速!「Luckin Coffee(ラッキンコーヒー)」がたった19ヵ月でIPO!

米ニューヨーク時間の2019年4月22日、アモイ(福建省)に本社を置くコーヒーチェーン「Luckin Coffee(端幸珈琲)」は米ナスダック(NASDAQ)市場への上場申請を米証券取引委員会(SEC)に届け出た。その目論見書によると、同社の直営店は2370店舗、来店者数はのべ1680万人となっている。

それから数週間が過ぎた5月17日(現地時間)、「Luckin Coffee」はついにナスダックに上場を果たした。3人のバリスタ、そして「Luckin Coffee」最大の株主である配車サービス大手「神州優車(UCAR)」の董事長兼CEOである陸正耀氏が上場記念の打鐘を行い、大きな歓声が沸き起こった

「Luckin Coffee」は米国預託株式(ADS)3300万株を17ドル(約1870円)で売却。当初予定していた調達目標額を上回る5億6100万ドル(約615億円)を調達し、時価総額は42.5億ドル(約4670億円)に達した。今年、ナスダックにおける最大規模のIPOであり、また、設立から19ヵ月という中国史上最速でのIPOという名誉を手にした。

この日の最高値は1株当たり25.96ドルで、一時53%の上がり幅を見せた。米市場への上場は、「Luckin Coffee」にとって文字通り「ラッキーだった」と言えるだろう。

CEOの銭治亜氏は上場後、「Luckin Coffee」の6つのポイントを発表している。その内のひとつが「顧客に高品質でコストパフォーマンスが良く、便利なコーヒーショップを提供し、中国人がより質の高いコーヒーを飲めるようにする。これが我々のブランドの使命である」というもの。

また、銭氏は「Luckin Coffee」の上場は「中国のコーヒー消費文化の始まりである」とし、「スターバックス、Costa等のブランドよりも安い価格で、コーヒー改革を進めることは並大抵のことではない」ともコメントしている。

それではなぜ「Luckin Coffee」は米国での上場を選択したのだろうか。

「Luckin Coffee」は今年初め、香港での上場が噂されていた。にも関わらず、最終的には米上場を選択した。国際的なブランド力向上、資金調達の優位性等、米上場のメリットは多いが、要は「スターバックス」と同じ土俵で戦う決意を固めた、とも見てとれる。彼らの頭には「身の程知らず」なんて言葉はないのだろう。

上場申請の5日ほど前、「Luckin Coffee」はシリーズB+で米資産運用会社「BlackRock Inc.」等から1.5億ドル(約165億円)を調達している。「Luckin Coffee」の2019年第一四半期の売上は4.79億元(約76億円)で、純損失5.52億元(約87億円)を計上。2018年一年間の売上は8.41億元(約133億円)であるのに対し、純損失は16.19億元(約257億円)だ。

時価総額でも「スターバックス」には到底及ばない。「スターバックス」の時価総額は946億ドル(約10兆4000億円)に達しており、「Luckin Coffee」はその二十分の一程度しかない。

しかし、シリーズB+を主導した「BlackRock Inc.」が「スターバックス」の大株主でもあることは注目に値する。「Luckin Coffee」は世界トップクラスの投資機関から認められたことを意味するからだ。

「Luckin Coffee」は“燃焼式ビジネス”とも言える方法で急成長を遂げた。アグレッシブなキャンペーン(割引券のバラ撒き等)でユーザーを次々と獲得し、損失を出しながらも店舗数を増やしてきた。

言ってしまえば、このスピード感こそ「Luckin Coffee」の最大の武器であり、また、弱点ともなりうる。

「Luckin Coffee」はこうした“やり方”をいまだに押し通しており、現時点では「Luckin Coffee」の米国市場上場を「泡のように中身がない」と疑う人もいる。一方で「泡があるからこそ、美味しいコーヒーなのだ」と同社の姿勢に理解を示す人もいる。

前出の銭氏は今年中に新たに2500店舗をオープンさせる計画を公表している。計画通りに運べば、「Luckin Coffee」の国内店舗数は「スターバックス」を上回り、再び大きなインパクトを市場に与えることになるだろう。そして、その時に収益性の改善はもたらされているのかどうか。史上最速で上場を果たしたこの企業の動きは、今後も注目を続けていきたい。

先日まで毎週500万元(約7950万円)を還元するキャンペーンを展開していた。筆者も毎週条件をクリアして現金を得ていた

佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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