1年で2000店舗!中国で話題のluckin coffeeとは

2018年に一気に店舗を広げて話題になったluckin coffee(瑞幸珈琲)、2017年10月に設立されまだ1年ちょっとしか立っていないにも関わらず現在約2000店舗になっている。

なぜ、こんなに急激に大きくなったのか背景から紐解いてみよう。

 

luckin coffee(瑞幸珈琲)は2017年10月に設立され、創業者は中国大手レンタカー事業などを行う神州優車のCOOで女性の銭治亜氏である。

スターバックスが空間を提供する事をテーマとしているのに対して、luckin coffee(瑞幸珈琲)はニューリテールというところで勝負をしている。

基本スタイルはアプリまたはWeChatのミニプログラムを使用して注文をして、お店に取りに行く、もしくはデリバリーしてもらう形である。お店に直接行ってオーダーしようとしても“アプリから注文してください”と言われてしまう。

注文をオンライン化する事で並んで待つという事は特にない。

オフィスビルの1Fに入っていたりするのを見るとOLなど若い社会人をターゲットとしているような気もするがいろいろ調べて見るとそうでもないようだ。

また、価格面でもスターバックスなどアイスコーヒーが31元くらいの値段であるのに対して、luckin coffee(瑞幸珈琲)は24元で提供している。

設立からたった半年で500店舗に達するという前人未到のスピードで展開し、2018年12月までで、約2000店舗に達している。この店舗はフランチャイズではなく全て直営店というから驚きである。

2019年1月に創業者の銭治亜氏は今年一年で2500店舗増やし合計4500店舗にまで増やす計画であることを発表している。

また、2018年年末までに8500万杯のコーヒーを販売し、その中でも2018年第三四半期だけで3670万杯を販売しており、販売数は急激に伸びている。

 

現在、資金調達はシリーズBのフェーズまで進んでおり、約22億米ドルを調達している。最近のニュースでは調達した資金のうち半分近くを既に焼却しており、このままで大丈夫なのかという声も上がっているほどである。

短期間にこれだけの直営店を増やしているので、当然の事でもあるわけで、創業者の銭治亜氏はこの件について“お金はそんなに重要な事ではない”と語っている。

この燃焼式投資はluckin coffee(瑞幸珈琲)特有のものでもなく最近のIT企業などでも見られる方法で、JD(京東)やYouku(優酷)、神州優車も設立後に同じ燃焼式戦略を取っていた。

それでは何故、これだけ投資してまで店舗を増やしているのか。

その答えの一つに彼らが狙っているのはB2CではなくB2Bであるというところにある。

 

彼らのアプリを実際にダウンロードして使ってみる。

WeChatのアカウントでログインするとすぐに割引券を貰えて、最初の一杯はタダ同然で飲むことができる。このような割引券を配る事で会員を増やしている所を見るとB2C向けにも見えるが、トップページにある“企業アカウント”という所がポイントとなるようである。

もちろん、B2Cを捨てている訳ではないので、上記のような割引券を配るなど会員の確保もしっかりやっているが、この企業アカウントこそ一番力を入れている所なのである。

 

実際に中国の会社を使って登録を試みて見よう。

企業アカウントサインアップから企業情報などを入力して送信、すると10分後くらいに登録した電話番号に電話が来て、企業情報の確認や割引規約などについてあれこれ確認されたのである。申請後すぐに電話がかかってくるところはB2Bに力を入れている証拠であろう。

 

電話が終わると正式に登録完了となり、パソコンからログインをして管理画面に入って色々な設定ができるようになる。

管理画面を見てみると社員管理や領収書といったメニューがあり、それぞれ誰がいくら使ったかなど分かるようになっている。

B2Bの主な狙いは何かというと、企業単位で契約を取り、仕事中に飲むコーヒーの市場を狙っている訳である。例えば営業マンが外のカフェで打ち合わせをすることも多いだろう。

その時のコーヒー代は企業アカウントで指定された社員はそのコーヒー代を企業アカウントにチャージしてあるお金で購入することが可能になる。

また会議や社内での打ち合わせにもアプリから注文すれば届けてくれるため、企業アカウントのお金で清算が可能となり、仕事場でのコーヒーは社員が後から清算する必要がなくなる。

打ち合わせのコーヒー代が意外と多いと思う方は少なくないはずである。

 

ここの狙いを理解することで、打ち合わせなどどこに居てもすぐ近くにluckin coffee(瑞幸珈琲)がある状況があって初めて成り立つので、これだけ急速に店舗数を増やしている事に納得できる訳である。

そうでなければ、打ち合わせで使いたくても近くに無ければ他のカフェに行ってしまうだろう。

 

企業が利用するコーヒーの市場を独占しようという狙いがあるからこそ、ここまで大胆に燃焼式投資を行い、店舗数を増やす必要があるのではないかと筆者は考えている。

 

今年本当に4000店舗まで増えれば、街のあちこちに店舗を見ることが可能になるだろう。

もちろんスタバのような空間を求める人もたくさんいると思うが、毎日コーヒーを飲む人にとってみれば、価格も重要なファクターである。

 

この先どこまで伸びるか楽しみな企業でもある。今後に注目したい。

 

佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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