ジェトロ・イノベーション・プログラム、深センでピッチイベントを開催

2019年9月19日、日本貿易振興機構(JETRO/ジェトロ)が毎年開催している「ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)」の深センプログラムが開催された。同プログラムはイノベーティブな技術・製品と知的財産を有する日本のスタートアップの海外展開支援を目的に開催されており、今年は日本のスタートアップ9社が、中国でのパートナー探しや市場開拓、資金調達を目指してピッチを行った。

「JIP」は日本で公募し、メンタリングや合宿等を行った上でピッチや展示会への出展等を行う。今回参加した企業は半数近くがヘルステック関連企業で、残りはロボット等のハードウェアが中心であった。

会場には約80名の中国の投資家、VC、企業の関係者が来場。日本のスタートアップのアイディアや技術、ビジネスモデルに熱心に耳を傾けた。

イベントはまず、JETRO広州事務所長の清水顕司氏、深セン市南山区テクノロジーイノベーション局局長の劉石明氏、深セン精華大学研究院副院長の劉仁辰氏の挨拶から始まり、こうしたイベントを催す重要性ーー交流や協業の場としての役割、双方向で学べる機会の創出、深セン企業の国際化のきっかけ作り等について強調された。

ピッチは1社10分間のピッチ、5分間の質疑タイムで構成されており、終了後には個別に商談ができる時間も設けられた。

前半はスマート技術をテーマにした5社が登壇。1社目は高自由度の遠隔制御ロボットを開発している「Telexistence」(東京都)だ。

同社のロボットは5Gを活用することで、より正確な遠隔操作が可能となり、低遅延も実現できる。動きのデータを取りながら、反復作業にも反映させており、倉庫内作業、宇宙や航空機の外での遠隔作業、原発や自然災害等の危険な状況下での作業を想定。日本では倉庫での実用化からスタートしている。

2社目は高機能ロボット義足を開発する「BionicM 」(東京都)で、義足を使用してきた自身の体験が研究開発の第一歩となっている。パワーモビリティとして、ロボットよりも早く動ける義足を開発している。現在あるものは99%が動かない義足で、あくまでサポートのみ。一方で同社の義足はセンサー等を使って動きの制御もでき、転倒防止等を実現している点が特長だ。

3社目は「ユーザベース」(東京都)で、アジア最大の金融情報プラットフォーム「SPEEDA」の開発・運営を行っている。企業情報収集から資料制作の時間を短縮できるサービスで、M&A等の情報も探せる。

例えば、市場の状況がすぐに分かり、その業界のレポート等をまとめている。海外の市場を知ろうと思った際に、ローカル言語がわからないと調べるのが困難だが、そこを解決してくれるのが「SPEEDA」だ。さらにオーダーメイドのサービスにも対応しており、知りたい業界の知りたい情報をピンポイントで得ることができる。

4社目は「スマック」(滋賀県)で、モータの省エネ駆動制御を中心としたパワーエレクトロニクス技術を有するベンチャー企業だ。日本の自動車業界等を対象にしており、EVにも応用できる技術だ。モーターの高効率化等の消費電力削減を目指しており、グリーンエネルギーにもつながり、EV市場に将来性がある中国は大きな市場となる。

5社目は「インターメディア研究所」(東京都)で、タッチセンサーを使ったマルチカードや「C-Stamp」と呼ばれる電子スタンプを開発している。マルチカードはカードに情報を埋め込み、スマホの画面にカードをかざすだけで情報を抽出することができる。

休憩を挟み、後半は多くのヘルステック企業が登壇した。

後半戦の6社目は「meleap 」(東京都)で、ARグラスを装着してプレイするテクノスポーツ技術企業で、テクノロジーとスポーツを融合させ、スポーツイノベーションに取り組む。テクノスポーツはEスポーツの中のひとつの位置付けであり、「ゲームではない」というところにポイントが置かれている。

7社目は「ヘルスケアシステムズ」(東京都)で、郵送による健康検査システムを作っている。サービスにはエクオール検査や不妊治療検査、ガン検査等がある。健康データを収集し、そのビッグデータを分析することで、より良い健康を目指すデータ活用を行っている。同社では検査しかできないため、薬剤、保険、病院等のパートナー企業が必要ということだ。

8社目は「リーズンホワイ」(東京都)で遠隔診療サービスのビッグデータプラットフォームを提供する企業。同社の「Findme」はAIを活用し、がんの治療法に悩む人にがんの専門医からの意見をインターネットで提供するネット型セカンドオピニオンサービスだ。

最後に登壇したのは「日本ナチュラルエイジングケア研究所」(東京都)で、AIを活用し、健康改善を目指している。薄毛に対してのソリューションとして“ヘアAI”というプラットフォームサービスを紹介。同サービスはQ&Aから始まり、診断、分析、そしてアドバイスという流れで進む。AGA治療薬は基本、男性しか使用できないが、このヘアAIは女性でも使えるというアドバンテージがある、と強調していた。

深センでもヘルステックは非常に注目されている分野であり、経済が豊かになった中国人にとって健康は重要なテーマとなっている。それだけ市場としても期待が大きい。

中国の健康産業の市場規模は現在8兆元(約120兆円)を超えており、2020年には10兆元(約150兆円)に達する見込みだ。また、超高齢化社会の日本について「学びたい」「協業したい」と願う中国企業も少なくない。今後中国との協業等を目指す上では欠かせない分野と言えるであろう。

関連リンク
https://www.jetro.go.jp/ext_images/services/innovation/pdf/jip_list2019.pdf

記者:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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