深圳ローカル考(11)/憧れの新都ホテルが、維也納ホテルより安い理由

■ホテル価格の逆転劇

12月初旬、珍しく深セン(羅湖)駅前のホテルに泊まることなった。小職がパラリーガルを務める法律事務所が改編され中国有数の大所帯になるため会合が重なったからだ。

投宿先は、老舗の四つ星シティホテル、新都酒店。小職が初めて深センを訪れた1990年代後半は、駅前のホテルといえば、シャングリラかセンチュリープラザ(新都)の二択で、ベストウエスタン(富臨)は駅から少し離れているうえに、新しい駅舎の工事で舗装も不十分で敬遠していた。そんな時代だった。

そんな憧れの新都ホテルが、一泊たったの380元。お隣シャングリラの5分の1以下まで値崩れしていた。

ところが、人民南路を挟んだ新都ホテルの向かいにある、維也納(ウイーン)ホテルは、なんと397元。ウイーンホテルといえば、三ツ星クラスの格下ビジネスホテルではなかったか!?

380元と397元――。この価格の逆転劇を、会社の同僚、いわゆる弁護士資格を持ったプチセレブな“老深圳”に伝えても、なかなか信じてもらえなかった。

■アプリ普及に対抗。囲い込み戦略

ちなみに、同日の同じ部屋のウオークイン価格は568元。価格差1.5倍! 便利さを通り越して、ブランドイメージに関わる問題だろう。にもかかわらず、濃紺の質素な制服に身を包んだ受付レディは「携程(中国最大のオンライン旅行会社Ctrip。携程旅行網)のほうが安い」と臆面もなく教えてくれる。

そういえば、小職が業務を担当していた武漢の四つ星ホテルでも、価格差はおよそ1.5倍。しかも宿泊客の70%以上をCtrip経由で集めていた。ウオークイン価格の意味すら薄れてしまっているように見えた。それでも地方都市ならではの現象かと思っていたら、どうも、こうしたオンライン予約依存症は、老舗系の高級ホテルに多いようだ。

かたや、維也納(ウイーン)ホテルや錦江(ジンジャン)ホテルは、グループ内で様々な価格帯のブランドを持ち、オンライン予約依存とは無縁だ。

とくに錦江グループは、中国の国内外でM&Aを積極的に行っている。

http://japanese.china.org.cn/business/txt/2017-10/16/content_50038093_2.htm

加速する中国旅行会社の海外進出~中国網日本語版(チャイナネット)2017/10/16

価格の逆転劇にも対抗策をうっており、ホテル利用客の囲い込みに余念がない。たとえば、同グループの上級会員になり、事前にお金をチャージすれば、Ctripよりも安い価格で宿泊できる。

これからより一層多種多様化する顧客ニーズに対応できないホテルは、今後じわじわと淘汰されるだろう。中国本土内の激しい価格競争の恩恵に授かれるのは大歓迎!ということで、中国随一のスタートアップ都市の玄関口にあるホテルの、適正価格を考えさせられた出来事だった。

 

 

【ライター:加藤康夫(東方昆論法律事務所/コミュニケーションデザイン海外事業部)  】

 

加藤康夫
華南NET代表、東方昆論法律事務所パラリーガル、(株)コミュニケーションデザイン海外事業部。東京外国語大学(外国語学部)在籍後、講談社  契約記者。深圳大学(中国広東)留学を経て華南(香港)日商企業信息資訊有限公司設立。CEO兼編集長として香港華南エリアの日本企業向け会員制ビジネス誌「Kanan
monthly」発行。プロモーション・マーケティング支援、法律実務コンサルティングを経て現職。1972年水戸生まれ。

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