90年代生まれの元MakeBlock Japan代表劉氏にインタビュー
|今回、元Makeblock Japan代表の劉氏に自身のことやSTEM教育について話を聞く機会があったのでインタビューさせて頂きました。
彼自身は現在Makeblockを辞めて起業準備中である。有名な会社を辞めて起業する考えなど興味深い話を聞くことが出来た。
・Makeblockに入った経緯を教えてください。
以前は日系の商社に勤務していたが、自分のスキルアップのために起業しようと考えていて、その前にもう少し経験を積もうと思って、色々と市場調査をしてみました。個人的にはロボット産業には将来性があると考えており、その次に教育関連の新興産業にも将来性を感じていた。
2016年初めにロボットという分野と教育という分野、どちらの要素もあるMakeblockに入社を決めた。入社当時は100人ほどの会社であったが、この一年半で500人以上に増えた。
・Makeblock Japanはこの1年でどのように発展したか
入社当時のMakeblock Japanの業績は企業全体の1%しかなく、基本的には顧客がいない状況であった。私たちはまず、アジア、オセアニア地区から切り込んでいった。オーストラリアやアメリカ、台湾、香港、シンガポールなどを周りそれぞれの市場を比較した。
展示会への参加や様々な販売チャンネルを通して活動を行い3ヶ月後にSoftBank C&Sと組むところにまで至った。
ソフトウェア、ハードウェア、人材、コンテンツ、チャンネル、この方面に関しては特に需要なキーワードであり、その中でも人材とコンテンツについてはコアとなる部分になる。我々は日本の会社と協力し、日本初のSTEM教育協会を設立しました。
この協会を通してたくさんのSTEM人材を育成し、STEM教育を普及してきた。これらの要素が一つの輪となっている。こうして1年間で日本のSTEM業界でトップクラスの水準にまで達することが出来た。
・現在何をしているか、なぜ会社を離れて起業しようとしたのか
私は日本で長い時間仕事をしてきて、Makeblockにいたときも累計200~300の企業へ訪問した。そのおかげでメディア関連の人たちや政府関連、教育業界などの人たちともたくさん知り合うことができた。彼らと話していて、全体的に見ると中国企業は日本企業よりもまだ遅れている印象である。しかし多くの日本人が深センという場所が特別な都市を意識していて、深センの新しい技術製品、深セン人のスタートアップ精神、スタートアップしやすい環境など、ハードウェアのシリコンバレーとして理解している。
この点に関しては私は大きなチャンスだと感じている。深センではどんどん良い物が生まれ世界へ影響を与えている。私はその真ん中で橋渡し的な存在になれればと考えています。Makeblockもその中の一つになるでしょう。他にも優秀で素晴らしい企業や製品が深センにはたくさんある。そのような素晴らしい製品や企業を日本や世界へ持っていきたい。日本という場所も自分ではよく知っている場所なので、そこを起点としてビジネスを広げたいと考えています。
世界最大の電子展示会『CES』上の不完全な統計ではあるが、『CES』における深セン企業の出展率は10%前後にも上る。そこには深センの市場活力を垣間見ることが出来る。我々がやっていることは深セン企業が日本市場へ進出する際のコンサルティング、投資、製品の代理、マーケティング等のサービスである。日本と深セン双方向どちらの市場にも有益な影響を与えられたら良いと考えてます。
・日本におけるSTEM教育と深センにおけるSTEM教育について
個人的観点から見ると、深センと日本を比べるというよりは、世界という視点から見ていきましょう。STEM教育の発展にはいくつかの段階があり、アメリカが一番上にいて、その次にヨーロッパやオーストラリアがあり、3番目にシンガポール、香港、台湾があって、中国と日本はその次になる。
中国も大きく場所によって違うので、全体として見ると中国と日本は同じだが、深センを始め、北京や上海、南京、成都、武漢などの一級都市は日本より1段階上になる。その理由としては政府の出す政策によるバックアップが必要になるからである。
政策という部分からすると日本は中国に比べて問題が多いと感じています。中国政府は近年にSTEM教育に対して多くの予算が出している。
STEM関連の実験学校は約100校くらいすでに運営されていますが、日本ではまだSTEM教育関連の投資またはファンドなどもなく、唯一あるのは2020年から小中学校の課程の中に組み込むことを開始するというところだけである。
アメリカをはじめ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアはSTEM教育が既に普及しており、中でもアメリカは20年前から始めている。オバマ政権の頃から2015年までにアメリカ政府として数十億米ドル予算を投じてきた。
日本政府も既にSTEM教育は重視している一面もある。私個人としては恐らく今後伸びていくだろうと思います。現在の状況から見ると、中国と日本でどちらがSTEM教育を行うには良いのか言い難い。しかし中国ではたくさんの学校で既に導入が始まっている。中国の方が行動という面では一歩先にリードしている。私の将来的な目標は日本へのSTEM教育の推進と普及と深センにおけるIoTや人工知能などのハードウェアを日本を始め世界へ持っていきたいと考えている。
【ライター:佐々木英之】
中国深センの富門グループ(Richdoor Group) にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。