中国の無人スマートホテル動向『アリババが密かに進めていた無人ホテルがオープン』

先日、アリババグループ傘下の旅行サイト『飛猪(フェイジュー)』が発表した内容によると、アリババが世界初となる顔認識を全面的に駆使した無人ホテルを立ち上げたとのこと。
このプロジェクト、こっそりと2年間準備してきたそうだ。

その名も “未来ホテル(Fly Zoo Hotel)”

このホテルにフロントデスクは無く、顔認識でチェックインを行う。“天猫精霊” (アリババのAI Labのブランド)の“福袋”というロボットが入り口でお客さんを迎え、チェックインの際に本人確認を顔認識で行い、チェックイン後は自動で部屋のドアを開けてくれる。

部屋の中は“天猫精霊”のスマートスピーカーで部屋の中の家電を操作出来る。
そしてスマホのアプリでチェックアウトもできる。
テクノロジーを駆使することで、ホテルをスマート化し、業務の効率を上げることが可能となり、多くのユーザーを増やせるという。

この写真を見ると、アリババの『未来ホテル』のスタイルはどこかで見たことがある気がする。

というのは、以前に我々が紹介した深センの無人ホテル『楽易住(ラーイージュー)』である。
実はこのホテルがアリババよりも早く無人ホテルを世に出している。

▲深セン発の無人ホテル「楽易住」杭州下沙店

 

深センの無人ホテル「楽易住」は国内初の無人スマートホテルチェーンで、昨年の10月から成都にてテストマーケティングを開始し、深センでの運営を開始した後に、現在では上海、広州、杭州などに進出している。

顔認識でチェックインをしてから、アプリでチェックアウトする流れで、この流れを体験してみると分かるが、深センの無人ホテルとアリババの未来ホテルは非常に似ている。

この2つの違うところは、資金力の大きいアリババは、共有エリアにセンサーを付けて、利用客の本人確認を行い、エレベーターで自動的に部屋の階まで上がることができる。
また、レストラン、ジム、プールなど全てのサービスが顔認識で決済できる。顔認識によりその利用客がどの部屋に泊まっているのか、何を消費したのかなど、全て一括管理できるところであろう。

食事の際に部屋から出たくない人は、アプリ上で注文することでロボットが部屋の前まで料理を持ってきてくれる。

アリババが提供するサービスは非常にクオリティが高く、その分価格も比較的高めとなっている。
7種の異なる雰囲気の国をテーマにした部屋は、11月11日の独身の日(アリババが毎年行うお買い物デー)の予約価格は、1泊1,399元(約23,000円)である。

この価格に対して、深センの無人ホテルは大衆的な価格となっており、各ホテルごとに部屋の形も違う。価格もほとんどが200-300元(約3,300円-5,000円)の間で、誰でも利用しやすい価格帯に設定されている。

 

 

 

無人ホテルのスマート化傾向

ホテルの無人運営の概念については以前からあったが、早い段階ではまだ技術が追いつかず、色々な問題を抱えていた。
そして2018年の元旦に深センの無人ホテル「楽易住」は正式運営を開始、後を追うようにホテルのスマート化が進んでいき、無人ホテルの競争が始まった。

▲深セン無人ホテル『楽易住』沙頭角店

 

この1年の間に、各大手IT企業が無人ホテル業に乗り出しており、インターコンチネンタルホテルグループは百度と提携すると発表、大手旅行サイトのCtripは『Easy住』というホテル戦略を発表し、WeChatは正式に『WeChatエコシステムホテル』を発表している。なぜこんなにIT企業がこぞってホテルをやり始めるのか。

 

アリババ未来ホテルのCEO 王群氏は次のように語っている。

「ホテルの管理システムをアップグレードすることで、未来ホテルは伝統的なホテルに比べて効率が1.5倍上がっている。ホテルのシステムをデジタル化することで、スマート化を進めることが可能になる。今アリババはホテル運営の為の大きな頭脳を作っている。AIによるシステムの応用は、ホテル業の効率と集客を大幅にアップすることができる。」

 

無人のホテル利用者が本当に居るのかとという点について、深センの無人ホテル「楽易住」副総裁の李展氏は次のように語っている。

「開業してから入居率が右肩上がりで伸び、現在は95%まで上昇、リピータ率も80%にまでなっている。スマート化させたことにより、運営コストが20%も下がった。
一方、競合が増えることで、クオリティに対しての追求が必要になってくる。ユーザーは、更に新しいものに対する期待が強くなる。この様な状況においては、ホテルは単純に寝泊まりするだけのものでなく、常にユーザーを楽しませるということが必要になる。」

 

また、ホテルにとって人件費はおおきな支出の1つである。無人化することで、人件費が抑えられるのは目に見えてわかることである。

それ以外に、ホテルのマネージャーやスタッフが不在で、パソコンで部屋の状態やなどを管理することになる。アプリを使うことで、部屋の修理や鍵の開け締め、必要なものの調達など、効率よく運営できることを実現させている。こうすることで中国の伝統的なホテル経営と一線を画することが可能となった。

 

ホテルで満足してもらうためには、食べる、寝る、遊ぶ、買う、娯楽などの需要を繋ぎ、テクノロジーを通してサービスの機能をアップグレードしていくことで、スマート体験やイノベーション性などを感じてもらう事が可能になり、ユーザーがより楽しい体験をすることができ、良いイメージを持ってもらえる。

ホテル無人化の背景には、多くの人たちの努力が注がれている。
無人スマートホテルは、今までの伝統的ホテルと違い、一人のスタッフが多くのお客さんにサービスするという形から、たくさんのモノが多くのお客さんをサービスする形に変わっている。多くの知識が、サービスをより良いものにすることが可能になった。

IT的思考とIoTプラットフォームと産業チェーンの運営スタイルが融合し、無人化の流れがホテル業界を新しいステージに進ませている。

 

 

文章:Murra(ホワイトホール)

編集:佐々木英之

 

【ライター:佐々木英之
ホワイトホール深セン事務所にて10年間の中国ビジネス経験。
日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

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